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2023.04.29 05:00

【日銀緩和維持】修正へ対話と説明重ねて

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 新体制が「異次元」の金融緩和の出口戦略をどう描くのか関心が集まる。唐突な対応は混乱を招きかねない。金融政策の方針を示す丁寧な説明と対話が不可欠だ。
 日銀は植田和男総裁が就任して初めての金融政策決定会合を開いた。前総裁の下で進めてきた大規模金融緩和は維持を決めた。
 植田氏はこれまでも、長期と短期の金利を操作して低く抑える現行の大規模緩和について、継続が適当と述べてきた。修正のタイミングが注目される中、今回は変更しない方向性は示されていた。慎重に滑り出した印象を受ける。
 決定理由について植田氏は、日銀が重視する基調的な物価上昇率は、目標とする前年度比2%に達していないことなどを指摘した。賃金の上昇を伴う形で安定的な2%実現には時間がかかると判断した。
 全国の先行指標とされる東京都区部の4月は伸び率が拡大した。特に食品の伸び幅は46年ぶりの高い水準となった。それでも「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は、本年度半ばにかけてプラス幅の縮小を見込む。その後は拡大を想定するが、2025年度でも消費者物価の上昇率は1・6%とみる。
 緩和策の継続とともに、植田氏は副作用に注意する必要性にも言及した。日銀は国債の大量購入で金利を抑えてきた。植田氏は昨年12月の緩和策修正や海外金利の低下で、国債市場のゆがみは解消しているとの認識を示してきたが、必要に応じて副作用に対処すると強調していた。
 新総裁となり、日銀が現行の大規模緩和を修正して金利が上昇するとの見方は根強い。大手生命保険などには、資産運用で国内債券への投資を拡大する方針を示す社が目立つ。一方で金融緩和をやめると国の利払いが増える可能性が高い。植田氏は財政支援の考えは否定しているが、財政に配慮して簡単に利上げできないとの見方も出ている。
 日銀が長期金利の上限引き上げを示唆すると上昇圧力がかかる。大量の国債が売られかねず、それを見越して臨むしかないのが実情だろう。市場との対話は簡単ではないが、丁寧な説明を重ねながら乗り切っていくことが基本だろう。
 日銀は金融政策運営の多角的なレビュー(検証)を1年から1年半かけて行うことにした。これまでに行った点検などよりも長い時間をかけ、過去の緩和策も対象とする。
 緩和の修正をもくろんでいるようにも見えるが、植田氏は特定の政策を念頭に置いているわけではなく、目先の政策変更と結びつけているわけではないと説明した。だが、幅広い分野に影響を与えた緩和策の効果や副作用を確認することは、今後の政策運営を探る上でも重要なのは間違いない。
 欧米では金融不安もくすぶり、対処すべきことは多い。大規模緩和からの脱却は容易ではなく、物価と賃金がそろって上昇する好循環の実現は見通せないが、堅実な取り組みで信頼を得ていきたい。

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