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2023.05.02 08:36

風を受け歩く「ビースト」展示 造形作家テオ・ヤンセンの四国初個展、高知県立美術館で開催中 6/25まで

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二つの胴体が連結して動く「アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ」(写真はいずれも高知市の県立美術館)

二つの胴体が連結して動く「アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ」(写真はいずれも高知市の県立美術館)


 無機質な塊が、がしゃがしゃと音を立てて歩き出す姿に、不思議と親近感が湧く―。風を受けて生き物のように滑らかに動く作品「ストランドビースト」を発表しているオランダの造形作家、テオ・ヤンセンの四国初の個展が、高知市高須の県立美術館で開かれている。「ストランドビースト」はオランダ語で「砂浜の生命体」を意味する。物理学を基礎に、チューブなどを緻密な計算で組み合わせた13点を展示。無数の脚を持つ「ビースト」が実際に歩く様子も見ることができ、機能的で奥深い構造を堪能できる。6月25日まで。

 ヤンセンは1948年生まれ。名門デルフト工科大学で物理学を専攻し、後に画家に転向。芸術と科学を横断する作品から「現代のレオナルド・ダビンチ」とも呼ばれる。強風が吹く自国の浜辺にすむ〝生物〟として、90年から「ビースト」の制作を始めた。きっかけは環境問題で、「低地の多い国土を温暖化の海面上昇から守るために、砂を集めて丘を築く浜辺の生物」というアイデアから発展したという。

 体の大部分はプラスチックチューブ。「素材を限定することで自分の思考から自由になれる」とヤンセンはインタビューで語っている。他に結束バンドやシートなど身近な材料を使い、手作業で組み上げている。

キャタピラー型のビースト

キャタピラー型のビースト

 風がチューブを通ると、無数の脚がスキーストックのように伸縮するなどして前進する。コンピュータープログラムから生まれた無駄のない脚の動きは、短い滞空時間で着地するのが特徴。ヤンセンによると、これは本物の動物と同じため、人間には動物のように認識されるという。他に、波打って動くキャタピラー型などがあり、形状は多様だ。

 30年以上の間〝進化〟を続け、帆で受けた風をペットボトルに圧縮してためたり、下部のチューブに水が入ると方向転換したりと、状況の変化から身を守る機能も。本展では独特の作品世界を紹介し、1メートル台から15メートル以上のビーストを屋内外に展示している。

来場者が動かせる作品も

来場者が動かせる作品も

 全てのビーストには、個々の特徴に応じて「アニマリス」で始まるラテン語由来の名前が付けられている。帆船がモチーフの「アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ」や、全長12メートルの「アニマリス・オムニア・セグンダ」は、展示室で歩行の実演が見られる。

 同館の柳沢宏美学芸員は「仕組みや造形の面白さ、美しさと、一人の人間が生み出す創造力に刺激を感じてもらえたら」と話していた。

 ビーストの実演は月曜を除く毎日数回行われ、時間は日によって異なる。同館ホームページで確認するか、電話(088・866・8000)で問い合わせを。(徳澄裕子)

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