2023.04.27 08:00
小社会 底なし
互いに何度か停戦を呼び掛けようとしたが、相手の言語や文化が理解できず、全て裏目に出る。ひどくなる一方の戦争に双方は次第に疲弊していった。
やめたいけどやめられない。掲げた大義名分も次第に怪しくなる。半世紀以上も前の作品だが、いまの時代にも通じる風刺が効く。ロシアのウクライナ侵攻しかり、アフリカ北東部のスーダンしかり。戦争は底なしになりやすい。
スーダンの軍と準軍事組織の戦闘では、在留邦人の国外退避に安堵(あんど)するもつかの間、今度は同国がバイオハザード(生物災害)に陥る恐れが指摘され始めた。コレラ菌など病原菌を保管する研究所が占拠されたという。
深刻さを増す対立だが、元をたどるとあぜんとする。双方は協力してクーデターで国の実権を握ったものの、内輪もめを起こしたらしい。それが国民の命を脅かし、国際社会を巻き込む混乱にまで発展した。
小説では、両星が戦争を始めたいきさつが最後に明らかになる。地球の宇宙船がごみを船外に捨てた。それが偶然バギ星の船にぶつかり、怒った乗員が銃を放った。戦争を始めるのは簡単。「しかし、それを終わらせるとなると」…。物語の落ちである。