2023.04.26 08:00
【衆参補選】謙虚な政権運営と説明を
衆参5選挙区の補欠選挙は自民党が4勝した。岸田政権の中間評価と位置付けられた選挙であり、岸田文雄首相は与党が掲げた政策が信任を得たとの認識を示した。
確かに、自民党は元の議席から1議席を上積みする結果となっている。政権の求心力は維持したとの評価が聞かれる。内閣支持率は回復の兆しを見せ、衆院解散論も一部でささやかれる。
しかし、衆院和歌山1区での手痛い1敗は重くのしかかる。接戦となった選挙区も多い。盤石の政権基盤を見せつけたとは言い難い。
首相は「国民の声を踏まえ、政治を力強く進めていきたい」と述べている。少子化対策や物価高対策など課題は山積する。政権批判とも真剣に向き合いながら、謙虚な姿勢で取り組むことが求められる。
欠かせないのは十分な説明と財源の明示だ。政府は昨年12月、国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定した。安保政策の大きな転換にもかかわらず、国民への説明は不足している。今年1月にはバイデン米大統領と会談し、防衛力強化や防衛費増額の方針を説明したのとは大きな違いがある。
原発回帰も進む。運転期間を見直し、古い原発を長く使う方針だが、安全性への懸念は消えない。「丁寧に説明する」と繰り返すだけでは国民の理解は進まない。
財源を巡る方針も定まらない。子ども予算倍増を打ち出しても、負担の議論を先送りしては説得力を欠く。防衛財源も規模が先行するばかりで確保策は明確になっていない。争点化を避けるように、選挙中も議論は深まらなかった。
5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で首相は、「核兵器なき世界」へ向けたメッセージを国際社会に発信することを目指す。米国の「核の傘」への依存も問われることになり、説明が必要だ。
一方、野党側は連携の乏しさを露呈した。次期衆院選に向けた戦略の練り直しを迫られる。
立憲民主党は公認候補を擁立した3選挙区で全敗した。参院大分では自民新人に競り負けた。政治資金規正法違反事件で前衆院議員が辞職した千葉5区でも「政治とカネ」が問われる中、野党乱立で政権批判が分散して自民新人に届かなかった。
泉健太代表の責任論は早々に封じたが、党内の不満がくすぶっては一枚岩にはなれない。有権者に訴えが届かなかった選挙戦の総括が不可欠だ。改善点を今後に生かさなければ党勢の躍進は望めはしない。
そうした中、日本維新の会は和歌山の勝利で勢いづく。統一地方選でも地方議員の獲得目標を上回った。自民にとどまらず野党内からも警戒感が強まることが想定され、国会での連携の在り方が問われる。