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2023.04.24 05:00

【外交青書】安全保障は対話も不可欠

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 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増し、防衛力の充実は急務だ。もちろん武力偏重に陥らず、外交努力と対話を重視する必要がある。地道な活動を通して地域の安定を確かなものにしたい。
 2023年版外交青書は、中国の対外姿勢や軍事動向などを「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けた。昨年末に政府が改定した安保関連3文書と整合させ、22年版青書の「安全保障上の強い懸念」から表現は厳しくなった。
 中国は覇権主義的な動きを強めている。台湾への武力行使を否定しない。東・南シナ海で力による一方的な現状変更の試みを継続し、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海への侵入を繰り返す。中国の無人偵察用気球とみられる物体は過去に日本上空にも飛来している。
 法の支配に基づく国際秩序を揺るがせるのは看過できない。ロシアと軍事協力を強化させる動きは「重大な懸念」であることは間違いない。中国はウクライナで続く戦闘の停止を求める一方、対ロ制裁には反対を表明した。中ロは北大西洋条約機構(NATO)や米主導のインド太平洋戦略など中ロ包囲網の強化に対抗する姿勢を鮮明にしている。
 青書はウクライナ侵攻などを踏まえ、「国際社会は歴史の転換期にある」と指摘する。北朝鮮は核・ミサイル開発を急速に進展させる。日本周辺の安保環境は戦後最も厳しい状況との認識を示している。
 安保面での多くの懸案や課題に直面し、政府は防衛力の抜本強化と日米連携の深化を打ち出した。防衛予算の増額も進める。だが、一体化の加速は緊張を高めることにもつながりかねない。主張の異なる国とも建設的かつ安定的な関係の構築を探る必要がある。率直な対話を重ねることが基本となる。
 国際情勢について青書は、「対立や競争と協力の様相が複雑に絡み合う状況」と分析する。米国と中国を見ても、覇権争いを続けても決定的な対立は避けたいのが本音のようだ。貿易面での摩擦はあっても、経済活動全体への決定的な影響は望んでいないとの見方は多い。
 優位性の維持へ対抗措置をとりつつ融和を探る。そんな両面からの関係模索が続く。日本も米中対立に巻き込まれず、独自の立ち位置から取り組みを進めることが重要だ。
 ウクライナに侵攻したロシアは核兵器の使用を辞さない構えを見せる。青書はこれを「言語道断だ」と厳しく批判し、唯一の戦争被爆国として「使用は許してはならない」と訴える。こうした主張を重ね賛同を広げる姿勢が欠かせない。
 ただ、核軍縮・不拡散を唱える一方、「米国との信頼関係を基礎としつつ、現実的かつ実践的な取り組みを進める」と、米国の「核の傘」に頼る姿勢をとっている。こうした対応は分かりにくさが拭えない。
 説得力のある取り組みとするには、何よりも国民への説明を重ねる必要がある。危機意識をあおるだけでは理解は深まらない。

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