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2023.04.20 08:00

【大手電力の不正】企業体質を改善できるか

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 大手電力会社が、競合関係にある新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題で、経済産業省が5社に対して業務改善命令を出した。
 この処分に先立ち、公正取引委員会は、電力販売で大手4社がカルテルを結んだとして総額1千億円を超える課徴金納付を命じている。
 電力の小売り自由化の趣旨をゆがめる不正行為が、相次いで断罪された。ともに背景には、長い地域独占状態から生まれた特権意識や法令軽視の体質が垣間見える。体質の刷新に踏み込まなければ、消費者からの信頼回復は望めまい。
 不正閲覧は四国電力を含めた大手電力7グループで発覚した。
 2016年の電力自由化の際、大手電力から子会社として切り離された送配電会社は、公正な競争のため中立的な運営を義務づけられていた。しかしシステムの不備もあり、大手側は送配電会社が持つ新電力の顧客情報を「盗み見」していた。
 このうち、閲覧情報を営業活動に使っていた関西電力や、閲覧が会社の計画的な判断だった九州電力などが悪質性が高いとして命令の対象となった。四電は勧告にとどまったが、法令順守の意識が欠けていたという点では他社と変わるまい。
 経営に不利がおよびかねない新電力には到底納得できる話ではない。自由競争が阻害されれば消費者サービスも低下する。不正閲覧をした社員らの中には、法令違反の自覚があった人も少なくないとされる点に「大手のおごり」がのぞく。
 そもそも、自由化前に送配電の分離を議論した際、大手と資本関係を切り離さずに公正な競争を保てるのか、との懸念はあった。
 その懸念が現実になったことを受け、政府の規制改革推進会議の作業部会は再発防止策をまとめ、資本関係を解消する「所有権分離」を提言した。大手側はなお反対の姿勢を崩していないが、検討を本格化させるべきだろう。
 関電など大手4社は、企業向け電力販売でもカルテルを結んでいた。互いに他社の区域で営業を控え、料金を不当に高止まりさせていた。
 関電以外の3社は、公取の認定に一部不服があるなどとして法的な対応も検討しているが、3社にカルテルを持ちかけながら、調査前の違反申告が認められて処分を免れた関電側は「地域独占時代の横並び意識があった」と非を認めている。
 大手電力は公共的な使命があり、法令順守へ高い意識が求められる。地域経済のリーダー役を務めることも多い。そうした立場と責任をどれだけ自覚できていたのだろうか。不正がまかり通る国の監視機能の弱さや制度的な不備も検証が必要だ。
 大手7社は現在、燃料代の高騰などに伴い電気料金の値上げを経産省に申請している。電気料金を高止まりさせていた可能性もある不正行為の続発に、業界に対する消費者の目が厳しくなるのは当然だ。健全な競争環境をつくり、顧客の満足度を高める経営姿勢を明確に打ち出す必要がある。

高知のニュース 社説

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