2023.04.19 08:00
小社会 テクノポリス
1979年11月、海援隊「贈る言葉」がレコードで出た。同じ年の10月には坂本さんが作曲したYMOの「テクノポリス」が発売されている。1980年の日本のヒットチャートは、「贈る言葉」やクリスタルキングの「大都会」などで彩られた。
それらヒット曲を紹介するラジオ番組で「テクノポリス」が流れた。不意をつかれる衝撃だった。
シンセサイザーの斬新な音色と旋律、コンピューターで制御された正確無比なリズム。「贈る言葉」や「大都会」にある日本的情緒とは無縁だった。テクノロジーが先導する新しいクールな時代の幕開けの楽曲に思えた。
テクノポリスから30年後の2009年、高知市の「かるぽーと」で演奏前の坂本さんにインタビューした。あの80年の衝撃を伝えた。「テクノロジーの進歩は必ずしも人間を幸せにはしないことを、みんな分かってしまいましたね」と坂本さんは振り返った。
そして心身の衰えを自覚し残りの時間を考えるようになった。年を重ねて自然はより親密なものになったとも話す。坂本さんは、ぼそり言った。「京都もいいけど高知に住んでみるのもいいかもね」