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2023.04.19 08:00

【G7外相会合】結束を核廃絶へ生かせ

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 核戦力を排除し、国際秩序を維持するために連携を強めていくことが求められる。対応への不信が高まれば目標は遠のく。実現へ向けて着実な取り組みが必要となる。
 先進7カ国(G7)外相会合は、G7として「核兵器のない世界」への関与を確認した。透明性を欠いたまま核戦力を増強している中国への懸念や、ロシアの核威嚇を受け入れないとする共同声明を発表した。5月のG7首脳会議(広島サミット)で議論を深める。
 声明は、原爆で広島と長崎の人々が経験した甚大な苦難を想起し、国の指導者や若者らに広島と長崎を訪問するように促す。また、軍縮・不拡散教育の重要性を強調した。重要なことだ。
 中ロを含む核保有五大国は昨年1月、核戦争回避が最大の責務とする共同声明を発表した。核兵器禁止条約の締約国会議をけん制する狙いが指摘されたとはいえ、ロシアは当事国だ。ウクライナで核威嚇を続ける自らを省みるべきだ。そもそも、他保有国を含め核軍縮へ向けた行動が停滞しているのは許しがたい。
 岸田文雄首相が昨年8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を打ち出した。核不使用の継続や核戦力の透明性の向上を柱とする。しかし会議は決裂し、NPT体制維持もおぼつかない。
 保有国同士の対立に加え、保有国と非保有国の分断が進み、唯一の被爆国である日本の役割もまた大きくなっている。だが、米国の「核の傘」に依存しながら、広島サミットで発信するメッセージに力強さを込めるのは相当の困難が伴う。首相の指導力が試されることになる。
 会合では、ロシアのウクライナ侵攻や中国の覇権主義的な行動に関し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への関与で一致した。また東・南シナ海情勢への深刻な懸念も共有し、一方的な現状変更の試みに強く反対することを確認した。
 中ロ連携を念頭に、ロシア制裁の回避や、第三国からロシアへの武器供与にも対処していく。アフリカに影響力を拡大している現状を踏まえ、G7でもインドなど新興・途上国との協力を強化して取り込みを図るとしたのは当然だろう。
 ただ、これらの国々は時に、先進国が主導する国際秩序に不信感を漂わせる。中国との経済関係やロシアとの軍事協力を重視する場合もある。林芳正外相が指摘したように、価値観を押しつけては摩擦を強めかねない。個別事情に配慮することが関係を築く基本だろう。
 ロシアのウクライナ侵攻はエネルギーや食料価格の高騰、供給不足を引き起こした。途上国を借金漬けにする中国の不公正な金融も問題になっている。きめ細やかな対応をして信頼を高める必要がある。
 対中姿勢はG7内でも温度差がある。中国市場をにらみ思惑は異なるだけに対応は簡単ではない。一枚岩になれるかが問われ、分断を狙う動きへの警戒も怠れない。

高知のニュース 社説

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