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2023.04.17 08:00

【Jアラート】情報の精度向上が急務だ

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 国民の生命を守る目的に照らせば、迅速な避難を促す情報の重要さは言うまでもない。ただ、正確性を欠いて信頼が揺らぐと「おおかみ少年」となってしまう。情報の速さを優先した結果とはいえ、精度の向上は喫緊の課題だ。
 北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の発射を受け、政府が発した全国瞬時警報システム(Jアラート)は再び市民生活に混乱を招いた。陸地を含めた北海道周辺に落下する恐れがあるとの推定から避難を呼びかけたが、間もなく情報を訂正。実際には日本の領土や排他的経済水域(EEZ)内への落下は確認されなかった。
 北朝鮮の弾道ミサイル発射はことし9回目。韓国軍によると、約千キロ飛んで日本海に落下したという。北朝鮮側は、事前の探知がより難しい固体燃料エンジンを搭載した新型ICBMの発射実験に成功したとミサイル技術の進展を誇示。明らかに国連安全保障理事会の決議に反しており、政府の抗議は当然だ。
 ただ、発射後の政府の対応にも不安が付きまとう。情報を国民に伝えるJアラートはこれまでにも、発令の遅れや関係ない地域の誤発出などトラブルが相次いでいた。今度はさらに、日本の情報収集や分析そのものに精度の問題があることがあらわになった。
 防衛省によると、初めて北海道南西部の陸地に落下する可能性を予測。Jアラートを発令したが、約20分後には「落下の可能性はなくなった」として訂正した。探知した直後、ミサイルがレーダーから消失したためだったという。
 もちろん、ミサイルのような高速の飛翔(ひしょう)体を正確に探知し、弾道を予測するには高度な技術が求められよう。だが、韓国軍は日本が見失ったミサイルを追跡できていた。ミサイルの探知や弾道の予測、情報提供の在り方などについて十分な検証が求められる。
 岸田文雄首相はJアラートの発令に関し、運用に問題はなかったと強調した。ミサイルであれ、災害であれ、現実的な危険性が予測されているのであれば「空振り」を恐れず、避難を呼びかける姿勢は重要になってくる。
 一方で、情報が正確性を伴わないと、信頼を失って避難行動につながらなくなる。それでは本末転倒だろう。今回の発射はちょうど出勤・登校の時間と重なり、交通機関が運転を見合わせるなどして、市民生活に波紋が広がった。その影響を軽視して「判断は適切だった」と批判をかわしたところで、国民の理解は得られないのではないか。説明不足の印象は拭えない。
 広く周知することが難しい軍事情報があっても、問題点を含めた現状を国民と共有するべきだろう。それがシステムの信頼性や実際の避難行動につながる。政府は夏ごろの運用を目指してJアラートの改修を進めているが、緊急事態での情報は命に直結する。速さと精度の二兎(にと)を追う必要がある。

高知のニュース 社説

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