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2023.04.14 08:00

【対話型AI】功罪を慎重に見極めよ

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 便利なのは確かだろうが、さまざまな危険性もはらんでいる。功罪を見極めながら、冷静かつ慎重に向き合っていくべきだ。
 入力した質問に対して、人工知能(AI)が文章で答える対話型ソフトが注目を集めている。
 米国の新興企業・オープンAI社が開発した「チャットGPT」の完成度は高く、インターネット上の膨大なデータを基に、自然でよどみない文章を生成する。世界各国で利用者が急増している。
 このツールにより、さまざまな業務の効率化や省力化、生産性の向上が期待されている。データの収集や文章の作成業務などで特に効果が見込まれ、政府も国会答弁など行政分野での活用を検討し始めた。
 ただ、AIの回答は、質問の単語や文章の続きを確率的に正しいものから選んで生成しているだけだとされ、精度は十分とは言えない。
 当欄もいくつか質問して回答を得たが、例えば「よさこい祭りの魅力」では、おそらく鳴子と表記されるべきところが「激しい太鼓の音とともに踊る」と表記されるなど、正確さを欠いていた。
 AIが学習するネット情報は、誤りのほか、差別や偏見も含まれ、それらが拡散する恐れもある。回答の文章が自然であるが故に、それらが不適切、誤りだと気付きにくい弊害もあるだろう。十分な注意が必要なのは言うまでもない。
 また、個人情報を扱う上での課題や著作権上の問題、さらに、自動的に文章が作られてしまうことによる思考力の低下といった点も指摘されている。それらをきちんと踏まえ、規制の在り方も含めて、対応を探っていく必要がある。
 プライバシー侵害の観点では、既に各国で規制の動きが出ており、イタリア当局は先月、チャットGPTの一時的な利用禁止を決定。フランスやドイツ、米国でも規制に向けた動きが伝えられる。開発会社は安全確保の取り組みを新たに公表した。動向が注視される。
 思考力の低下に関しては、文部科学省は、児童生徒が作文を書く時に使うことなどを懸念し、取り扱い指針の作成に着手した。大学でも、論文やリポート作成時に利用することを規制する動きが相次いでいる。
 教育界ではAIを有効活用する発想も提案されている。効果的な手法を十分に検討するべきだ。
 対話型AIは他社も開発を急いでおり、性能の向上が予想されている。そうなれば、生活や働き方が変わり、雇用が取って代わられるなど社会的な影響が極めて大きくなる可能性もある。
 米国では、人類がAIを制御できなくなることに懸念を強めた専門家や企業経営者が、開発を少なくとも半年間停止するよう求めた。人類がAIとどう共存していくかが問われる局面だともいえよう。
 活用方法や規制を考えていく上で国際的な協調は不可欠だ。先進7カ国(G7)議長国として日本も役割を果たす必要がある。

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