2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.04.13 08:00

小社会 ムツゴロウさん

SHARE

 昔の高知はテレビ番組の選択肢が少なかったせいか、ムツゴロウこと作家の畑正憲さんを認識するのは遅かった記憶がある。「ようし、よしよし」。あれほどさすられたら動物の方も少し困惑しているのでは、と率直に思ったりした。

 父は旧満州(現中国東北部)に渡って医師になり、辺境の無医村に赴いて開業した。自著「ムツゴロウの青春記」によると、小学校に上がる前の年だった畑さんの記憶は「このあたりで突然始まっている」。

 電気も水道もガスもない。友としたのは大自然。つかまえては飼った鳥のひなや獣の子が、「あの雄弁な愛くるしい瞳で見上げていた」。動物たちとの交流を深めた人生の原風景なのだろう。

 なぜ、あれほどさするのか。晩年、分析した記事が本紙にあった。問題行動を示す動物は「愛されることを知らないから、相手に優しくする方法が分からない」。人と触れ合うことで幸せを感じる物質とされる「オキシトシン」が分泌されることが分かってきた、と。

 畑さんは、人間同士の付き合い方の変化を心配している。パソコンやスマートフォンが普及して便利になった半面、人と触れ合う機会は減っている。握手だけでも。子どもの頭をなでるだけでも。「たくさん触れ合って、優しい気持ちを育ててほしい」

 人の痛みを知らないような犯罪や動画の拡散が目立つ時代。訃報が伝わったムツゴロウさんのメッセージを考えてみる。

高知のニュース 小社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月