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2023.04.13 08:00

【技能実習の廃止】人権を尊重した新制度に

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 労働力不足を補う実態からいって、人づくりを通じた国際貢献という建前は、以前から形骸化があらわになっていた。看板のかけ替えに終わらせないことが重要だ。外国人労働者の人権がきちんと尊重される仕組みづくりが急がれる。
 政府の有識者会議が、外国人の技能実習を廃止し、中長期的な定着を促す新制度のたたき台を提案した。政府は、今秋にもまとまる最終報告を踏まえて制度を設計する。
 技能実習制度では人材育成や技術移転など本来の目的とは裏腹に、実質的に労働力確保や人件費抑制の手段となってきた。
 そのなかで賃金未払いや暴力、パワハラといった問題のほか、妊娠や出産を報告すると退職を強要されるといった人権侵害と言わざるを得ない悪質な事例も相次ぎ、社会問題となってきた。厳しい環境に耐えかね失踪する実習生が後を絶たず、2021年には約7千人に上った。
 技能実習制度は、実習生が母国の送り出し機関に応募し、日本側の窓口となる監理団体が実習先の企業などに仲介する。この仕組み自体に問題が多発する原因があると言ってよい。
 送り出し機関に多額の仲介料を支払い、借金を背負って来日する実習生は多い。さらに、受け入れ先の転籍が原則認められないため、対等な労使関係が成り立ちにくく、人権侵害が発生しやすい構図が指摘されてきた。受け入れ先の事業者を監督する立場にある監理団体も、事業者が負担する監理費を原資に運営されており、その役割を十分に果たしてきたとは言いがたい。
 17年には監理団体や実習先を定期的に実地検査する仕組みができ、これまでに約400の事業者が認定を、43の監理団体が許可を取り消された。それでも取り締まりは不十分で、支援が行き届いていない状況がある。国内外から「奴隷労働」などと厳しく非難されてきた経緯を重く受け止めなければなるまい。
 たたき台によると、一定の技能を持った外国人労働者が対象の特定技能制度へ円滑につながるよう、新制度では職種をそろえ、事業所を転籍する場合の要件も緩和。日本で長く働ける仕組みを目指すという。
 抜本的な制度見直しは当然だが、懸念材料は残る。監理団体などを通じた受け入れの枠組みは維持されるからだ。人権が尊重される労働環境を確保できなければ、新制度も看板をかけ替えたにすぎなくなる。
 悪質な待遇や人権侵害を防げなかった監理団体や送り出し機関などの排除が最低限の課題となる。技術や日本語の習得などに関する支援態勢の充実を含め、新たな仕組みを丁寧につくり込む必要がある。
 日本経済では、すでに外国人労働者が欠かせない存在になっており、少子高齢化の進展で今後ますます、労働力確保は重要な課題になっていこう。海外から選ばれる労働市場になるために、差別のない労働環境、共生できる地域社会の実現が求められている。

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