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2023.04.12 08:00

小社会 カツオにスマん

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 「きょうはモンズマがある」というので待っていると、丸々とした上物が並べられた。「昔から数の少ない魚でね」と室戸市の鮮魚店のご主人。ぱっと見はカツオにそっくり。

 和名はスマ。きのうの本紙コラム「所感雑感」で、高知大教授の斉藤知己さんが紹介していた。30年前、名古屋の水族館で高知から運んだカツオやマグロの飼育に挑戦したが、ほかは死にゆく中で、スマだけは10年近くも生きた。

 なぜか。外洋のみを泳ぎ続けるカツオやマグロと異なり、スマは接岸部や磯場にも入って器用に泳ぐ。水槽で10年も生きられる強さは、その「鷹揚(おうよう)な習性」にあると斉藤さん。

 特性を生かしたということだろう、和歌山や愛媛では養殖にも成功している。産地でしか食べられない味が、いまや都会の食卓をにぎわせるというから驚きだ。

 とはいえ、その地に暮らし、または旅し、土地の名で食べる天然の味は格別だろう。土佐での呼び名はモンズマ。魚体の胸びれの下を幾つかの丸い紋で飾るからだ。紋をお灸(きゅう)のあとに見立て、灸を意味するヤイトと呼ぶ地もある。

 カツオとどっちがうまいか、食べ比べてみた。当方は「カツオにはスマんけんど」ということにした。春のカツオは甘みに加えてスピード感があり、産地で買う日戻りの身は絶品だ。スマは、これに本マグロの中トロと思う味わい、舌触りを足す。それこそ鷹揚な深みがある。土佐の海と味は果てしない。

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