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2023.04.06 08:00

小社会 まねをしない

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 縁あって先日、東京のある大学の入学式を見学させてもらった。大学幹部の式辞が続く中、印象に残ったのは法学部長の言葉だった。

 社会に出れば、正義や公平性、弱者を守る観点から賛成しがたい場面に立つことがある。そんな時「声を上げて反対する勇気を持った人材を育成しています」。しっかり勉強し、安易に迎合せず、自分の意見が持てる人間になろう、との呼び掛けにも聞こえた。

 世の中の正義はとかくゆがみやすい。だがそれにあらがえず、見て見ぬふりをする社会はもっと恐ろしい。かつて日本は経験した。異様な空気や精神に覆われ、軍人たちでさえ葛藤があった。大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」はそんな世界を描いている。

 この作品に出演し、音楽も担当したのが先日亡くなった音楽家の坂本龍一さんだった。苦悩する将校役がはまり役だったのは、坂本さん自身が常に世の中に一家言ある人だったからだろう。脱原発や環境問題でも発信を続けた。

 先月には、東京・明治神宮外苑の再開発中断を訴え、話題になった。過去を学び、流されず、問題を提起する。あの斬新で心に残る名曲たちもその生きざまから生まれたに違いない。

 坂本さんはかつて対談で述べている。「勉強とは過去の真似をしないためにやるんです」(川村元気著「仕事。」)。入学式の式辞を聞き、学生たちに坂本さんが残した言葉も届けたくなった。

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