2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.04.03 08:00

【スーチー党解散】民主派弾圧は許されない

SHARE

 真の民政復帰は一段と困難になった。軍政による強権支配は、選挙で示された民主化を望む民意と相いれない。弾圧をやめ、対話により混乱収拾を図るよう求める。
 ミャンマー軍事政権は、民主派指導者アウンサンスーチー氏の「国民民主連盟(NLD)」を解散すると発表した。解散処分で政治活動を完全に封じた。
 国軍はNLDが圧勝した総選挙で大規模な不正があったとして、2021年2月にクーデターを起こした。軍政は民主派排除を進め、スーチー氏らNLD幹部を拘束して事実上の活動停止に追い込んだ。
 今年2月には非常事態宣言を延長し、8月に予定された総選挙を無期限延期している。軍政は1月に新たな政党登録法を制定し、全国規模で活動する政党に対して半数以上の選挙区に候補を擁立することなどを義務づけた。
 NLD幹部は拘束や国外脱出しているため擁立は不可能な状況にある。民主派排除の固定化を狙っていることは明白だ。政党登録法に基づく届け出がこのほど締め切られ、NLDは届け出を断念した。
 NLDは1988年、当時の軍政解体と民主主義確立を目指してスーチー氏らを中心に設立された。国民の圧倒的支持を集めてきたが、政党資格を失った。ほかにも約40政党が届け出を断念したようだ。
 一方、届け出た60以上の政党は、ほとんどが親軍か反スーチー氏の立場とされる。国内が安定すれば実施するとした「自由で公正な選挙」は、民主派を徹底的に排除することで公正性を欠き、形式だけのものとなってしまう。そもそも強権は反発を招くだけで、国内の安定化を遠ざけることになる。
 市民は静かに反抗し、一部は国民防衛隊を創設して、自治権拡大を求める少数民族の武装勢力とも共闘しながら国軍に抵抗を続けている。国軍は民主派が武装闘争を続け、治安が安定していないとして弾圧を緩めない。衝突が激化し、僧侶や市民の殺害も報じられる。
 民主派勢力の象徴であるスーチー氏は汚職や国家機密漏えいなどの罪に問われた。無実を主張しているが、計33年の刑期を言い渡された。司法も巻き込み、徹底した排除が進められている。
 軍政は国際社会の意向を無視して権力独占を図ってきた。民政復帰へ向け、軍政に対する圧力を強めていく必要がある。
 しかし、中心的な役割を担うはずの東南アジア諸国連合(ASEAN)は意見が一致せず、クーデター2年の節目にミャンマーに対する声明を見送った。暴力停止を含む5項目合意の履行も進まず、新たな展開への期待は高まらない。
 日本も関与が想定されたが、効果的な動きは見られない。NLDの存続が認められなくなったことで早期の民主化は厳しくなった。それだけに、これまでに築いたパイプを生かして軍政への働きかけを強めていくことが不可欠だ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月