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2023.04.02 08:00

【温暖化報告書】今後10年が未来に響く

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 地球温暖化の防止策は待ったなしと言われて久しいが、今後10年間の対策が人類や地球に数千年にわたり影響を与えるとする警告は衝撃的だ。取り組みを加速する必要性が改めて突きつけられた。危機意識を高め、対応に本腰を入れたい。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、今世紀末の気温上昇幅を産業革命前と比べ1・5度に食い止めるには、2030年に世界の二酸化炭素(CO2)排出量を現状からほぼ半減させる必要があると訴える。時間の制約がのしかかる。
 国際枠組み「パリ協定」は、気温上昇を1・5度以下に抑えることを目指している。しかし、気温は既に1・1度上昇し、1・5度を超える恐れが強まっている。報告書は、対策を強化しなければ、今世紀末には最大3・4度上昇すると予測した。しっかりと受け止めなければ、温暖化による重大な被害を回避することはできなくなる。
 1・5度上昇に抑制するには、早急かつ大幅な排出減少へと転じなければならない。30年半減にとどめず、35年には65%減が求められる。メタンなどを含む温室効果ガス全体でも同様の削減が必要で、広範な対策が不可欠となる。
 今後、各国は35年の削減目標を策定することが予定される。各国がこれまでに示した30年までの削減目標では、達成しても2・5度上昇するとされた。もっとも、その実現さえ懐疑的な見方が出ている。削減へ向け、より積極的な姿勢を打ち出せるかが試される。
 気候変動は豪雨や干ばつなど極端な気象現象につながる。農業部門への影響は大きく、食料生産の減少につながる。生態系への影響も深刻だ。熱中症や感染症が増加し、インフラにも膨大な被害を与える。
 気候変動に対して非常に脆弱(ぜいじゃく)な環境で暮らす人は世界で35億人規模に上ると試算される。海面はこの120年ほどで20センチ上昇し、そのペースは加速している。地球規模での対策が不可欠となっている。
 日本国内でも、近年は豪雨に伴う河川の氾濫が多く報じられる。今後は大規模水害が発生するエリアが拡大する恐れが指摘される。多面的な災害対策は急務だ。
 報告書は比較的低コストで取り組める排出削減策を例示し、太陽光や風力の発電などが電力部門で有効であるとした。また、脱炭素を今世紀半ばには実現し、大気中からのCO2除去も必要になるとした。技術開発も重要な要素となる。
 国内では、脱炭素社会実現に向けた新法、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法が今国会で成立する見通しだ。投資を呼び込むための新たな国債や、CO2排出への課金を盛り込む。制度の実効性をいかに高めるかが鍵となる。 
 国際的な取り組みの中で、日本の存在感の薄さを懸念する声もある。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の議長国として、対策を主導する意欲を示すことも重要だ。

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