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2023.03.29 08:00

【「博士の新休日」】転換期迎えた土佐観光

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 桜の季節を迎えた土佐路で、新たな観光プロモーションが動き出した。佐川町出身の牧野富太郎博士や県内の草花をメインにした観光博覧会「牧野博士の新休日~らんまんの舞台・高知~」が始まった。
 4月から始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の放送を機に、高知県を「歩ける植物図鑑」に見立てて観光客の誘致を図る。
 牧野博士や「植物」といった要素はこれまでも高知の魅力に数えられてきたが、今回は中軸に据え、県内各地も足並みをそろえた。観光振興の新しいアプローチだ。効果を一過性に終わらせず、土佐観光の太い幹に育てていきたい。
 本県はこれまでも、NHK大河ドラマ「功名が辻」(2006年)や「龍馬伝」(10年)など国民的ドラマの舞台になるたびに、観光政策をてこ入れし、経済効果の最大化に努めてきた。「らんまん」も同様に好機になることだろう。
 運が良かったのは、新型コロナウイルス禍からの回復が急がれる局面と放送時期が重なったことだ。
 本県の入り込み客は、龍馬伝のあった10年に400万人台に到達。その後、おおむね400万人台を維持してきたが、コロナ下では260万人台に減っていた。V字回復を目指す中で、これほど強力な追い風はあるまい。
 弱点の解消も期待できる。本県入り込み客は男性が女性の2倍近くを占める。「―新休日」はどちらかといえば女性と親和性が高く、県も照準を合わせているようだ。効果的な発信を重ねていきたい。
 博覧会開催に当たっては、大きな新規投資は控え、今ある素材の磨き上げを基本とした。効果を県内全域に波及させるため、博士ゆかりの地や草花を楽しめるスポットで、受け入れ環境の整備、ガイドの養成などの準備を進めてきた。
 佐川町では牧野公園の整備などボランティアの地道な活動が花開く形になった。主要な研究フィールドだった越知町も含め、企画が充実し、大勢の来訪が見込まれる。自然がテーマであるだけに、環境や住民生活に支障が出る、いわゆるオーバーツーリズムには気を配りたい。
 期待されるのは、博覧会を通じて地域の人材が育ち、ノウハウも蓄積され、それが継続的に地域観光や活力につながっていくことだ。
 「―新休日」を切り口に、食や自然体験、歴史資源などを一体的に周遊する仕組みができるのが望ましい。長期滞在にどう結びつけていくかも課題となるだろう。
 県は3月末で、9年間にわたって展開してきた観光キャンペーン「リョーマの休日」を終了する。故・大橋巨泉さん作のコピーは遊び心があり浸透していたが、更新時期だと判断したのだろう。
 新年度からは関西戦略が具体化する。台湾からの定期チャーター便の就航も決まった。加えて「コロナ禍明け」で、土佐観光は転換期を迎えているとも言える。行政、業界は仕切り直すつもりで心構えを新たにし、態勢をつくり込んでいきたい。

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