2023.03.26 08:00
【物価高対策】予備費の膨張は不健全だ
政府は追加の物価高対策を決めた。低所得世帯への現金給付や、LPガスの料金を低減するための補助金など2兆円強の規模とした。
地方創生臨時交付金に5千億円の低所得世帯支援枠を新設し、住民税非課税世帯を想定して3万円分を目安に支援する。実際の支援策や対象をどうするかは、それぞれの自治体に委ねられる。
低所得世帯支援にはこれとは別に、国費で児童扶養手当を受けているひとり親世帯や住民税非課税の世帯を対象に、子ども1人当たり現金5万円の支給も盛り込んだ。
臨時交付金には物価高騰対策に使える枠も7千億円増額し、エネルギー対策を強化する。自治体の判断で家庭のLPガスの料金負担軽減や、電気の消費量が多い事業者への支援などに活用できる。
2022年度第2次補正予算では電気・都市ガスの料金抑制策を柱とした対策を講じ、使用量に応じた料金を値引きしている。一方で主に地方で使われるLPガスは対象外だった。価格や流通が多様で一律の値引きが難しいことが要因とされた。その姿勢を転換したことになる。
背景には、4月投開票の統一地方選などがある。物価高対策が主要争点となるため、地方を意識していることは間違いないだろう。
手厚い支援はもちろん必要だ。ただし、施策の必要性に応じた絞り込みが不可欠だ。対応を任される自治体側が、支給対象などに柔軟に対応できるのは望ましいが、線引きが難しくなることも想定される。混乱回避へ十分な説明が求められる。
追加対策費の2兆円強は22年度予算の予備費を活用する。予備費は具体的な使途をあらかじめ定めない。災害対策などに資金を機動的に使うためだ。
一方で国会の事前決議が不要で、内閣の裁量で使い道が決められる。このため国会審議や財政民主主義を軽視していると批判が根強い。
しかし近年は、新型コロナウイルス対策や物価高騰、ウクライナ危機への対応を理由に巨額の計上が常態化している。通常は5千億円規模だったが、22年度は当初予算で5兆5千億円とし、補正で総額は11兆7千億円を超えた。
予備費は具体的な支出が決まっていないため、次年度に繰り越せない。選挙にらみで未使用金を急いで使おうという姿勢がにじめば、政策への信頼が高まりはしない。
国会で審議中の23年度当初予算案にも同様の予備費を計上している。予算は使途を明確にするのが筋で、予備費頼みは健全ではない。巨額の財政出動が続くようでは、財政規律は緩んでしまう。不適切な支出がないか、国会で使途や効果を検証することが基本だ。財政への意識をあいまいにはできない。