2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.03.21 08:00

【子育て支援会見】具体性と根拠が欲しい

SHARE

 岸田文雄首相が、子育て支援と少子化対策について記者会見を開いた。育児休業の取得促進策などを表明したが、あえて会見を開くほどの内容があったかと言えば疑問符がつく。統一地方選を前に、政権をアピールする政治的意図を指摘されても仕方あるまい。
 少子化対策は今、最優先すべき課題の一つだ。取り組む姿勢が強いに越したことはなく、その決意を前面に出す政治的パフォーマンスも、全てを否定するものではない。
 だが、財源の裏付けや具体性のないまま、意欲や理念だけを繰り返すのは無責任な面もある。ポーズ、掛け声だけでは困る。今の訴えと、これから実現する政策のギャップが大きければ、政治不信を招き、政権評価に跳ね返ってこよう。
 2022年の国内出生数は初めて80万人を割り込み、少子化は危機的状況にある。会見で「これから6~7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と述べた首相の認識はその通りだろう。
 しかし、挙げた取り組みは総じて生煮え感を禁じ得なかった。
 最も具体性があったのは、育休取得になる。男女で取得した場合の給付率を実質10割にするとした。現状の給付率は67%で、男性の育休取得率は14%にとどまる。これを30年度に85%に上げる目標を掲げた。
 国の調査では、育休を取らない理由のトップは「収入減」であり、効果が期待できよう。ただ、原資となる雇用保険財政は厳しくなっており、新たな事業者負担が生じる可能性から実現性を疑う声もある。
 ほかに、フリーランスや自営業者らへの育児期間の経済支援、パート労働者らの年収が一定を超えると手取りが減る「年収の壁」問題などに取り組む決意を示したが、財源や制度設計には踏み込まなかった。
 中でも、「異次元の少子化対策」の目玉に位置づけた児童手当の拡充方針はなお、ぼやけたままだ。一部には、多額の財源を捻出する難しさから、育休取得支援を強調することで軌道修正を図ろうとしているとの指摘もある。
 首相は、肝心の財源について「まずは政策の中身が重要だ」とする。国会答弁がぶれて野党から批判された「予算倍増」の解釈も、「基準や時期を申し上げるのは適切でない」と、従来の域を出なかった。
 そもそも、岸田政権は3月末に各種政策の拡充策をまとめる方針だった。政策発表の場が近づいているにもかかわらず首相会見で先取りしたのはやはり、選挙前に政治的意図が先走ったということなのだろう。
 会見前日には、政権浮揚につながる日韓関係正常化にこぎつけた。その「二の矢」として内政問題をアピールしたかったのかもしれない。しかし発信は新味を欠いた。アピール姿勢が露骨だとして、逆に印象を悪くした人もいたのではないか。
 岸田首相は年初来、少子化対策への意欲を繰り返してきた。「掛け声」は何度も聞いた。求めるのは、具体性と根拠である。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月