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2023.03.19 08:00

【ガーシー氏除名】政治への不信を懸念する

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 参院は本会議で、国会欠席を続けていた政治家女子48党(旧NHK党)のガーシー(本名・東谷義和)議員に対し、最も重い「除名」の懲罰を決めた。ガーシー氏は議員資格を失った。
 選挙で国民の負託を受けた国会議員が、その立場を尊重、保障されるべきであることは論をまたない。しかし、正当な手続きを経ることなく欠席し続け、今後も職責を果たす見込みがないのでは除名もやむを得まい。国会欠席という政治以前の問題に、政治不信が増幅されることを懸念する。
 芸能人らの裏側を暴露するユーチューバーとして知られるガーシー氏は、昨年7月の参院選比例代表で28万票余りを得て初当選した。
 だが、投票した有権者の期待は早々に裏切られた格好だ。ガーシー氏は当選後もアラブ首長国連邦(UAE)などに滞在し続けている。昨年8月と10~12月の臨時国会、今年1月からの今通常国会に、一度も登院しなかった。
 議員は本会議や委員会の審議、意思決定に参加するのが職責である。ガーシー氏が所属する政女党は「登院しないことを公約に当選した」としたが、国会法も議員には召集日に国会へ集まるよう義務付けている。「全国民の代表」としての自覚に欠けるとして、懲罰を求める声が上がったのも当然だ。
 参院は数回の帰国要請を経て、出席を促す「招状」を発出。いったんは懲罰のうち「議場での陳謝」を科したが、ガーシー氏はその本会議をも欠席している。再び「院内の秩序を乱した」として懲罰委員会に付託され、除名に至った。
 懲罰に対しては、「少数派の排除は許されない」との反発もあろう。もちろん、多数派がその権力を振りかざして、少数派を排除する道具として懲罰を乱用することがあってはならない。民主主義の前提として、冷静な検討が求められたのは当然のことだ。
 ただ今回、参院の対応は手順を踏んでおり、懲罰までの時間も十分に確保されていた。ガーシー氏側が誠実に対応すれば、除名は回避できたはずだ。帰国すれば「不当逮捕される恐れがある」という理由を含め、かたくなな姿勢には首をかしげざるを得ない。
 ガーシー氏を巡っては今年1月、動画投稿サイトで著名人を中傷、脅迫したとして、警視庁が暴力行為法違反(常習的脅迫)などの容疑で関係先を家宅捜索し、逮捕状も出た。
 その捜査状況が念頭にあったのかもしれないが、決して国会議員の責務を果たさなかった理由にはならないだろう。ガーシー氏にはこれまで2千万円近い歳費や期末手当なども支給されている。国民の理解は到底得られまい。
 72年ぶりの国会議員の除名という異例の事態に、議席の重さを考える必要がある。政治家に加え、比例名簿に登載した政党の姿勢が問われよう。有権者も政治との関わり方を見直す機会にしなければならない。

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