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2023.03.18 08:00

【賃上げ春闘】勢いを中小、地方に

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 賃金抑制が続いてきた過去の春闘とは、雰囲気が一変した。2023年春闘は、歴史的な物価高を受け、労働組合の高水準の要求に満額回答する大手企業が相次いでいる。
 物価高で暮らしが圧迫される中、働き手には歓迎すべき流れだろう。賃上げによって景気が回復し、それがまた賃上げに結びつく好循環につなげていきたい。
 ただ、中小企業の労使交渉が本格化するのはこれからだ。
 労働者の7割近くを雇用する中小に賃上げが広がらなければ、景気は足踏みしたままで、二極化も進む。二極化の構図は、中小が多い本県のような地方と都市の格差拡大にそのまま当てはまり、地方の若者流出が加速する懸念も膨らむ。
 労働者にあまねく賃上げが行き渡ることが重要だ。大手の勢いを中小や地方に波及させる必要がある。
 今春闘は早い段階から、大幅賃上げの機運が醸成されてきた。
 円安やロシアのウクライナ侵攻を背景に物品の値上げが相次ぎ、1月の消費者物価指数は前年同月から4%以上、上昇した。必然的に実質賃金は下がり続けており、連合など労組側は高水準の賃上げ目標を設定。経済団体側も「賃上げは責務」と応じる姿勢を見せていた。
 大手企業のこれまでの交渉では、自動車や電機などで満額回答が相次ぎ、要求を上回る企業もあった。主要企業の賃上げ率は1995年以降、2%前後で推移してきたが、今期は3%台となる可能性がある。
 企業側が、従業員を守る姿勢を示したということだろう。
 「人への投資」「人材確保」の必要性を挙げた企業も少なくない。ただ、これまで必要以上に賃金を抑えてきたケースもあるのではないか。その結果、日本の賃上げが国際的にも後れをとったのだとすれば、手放しで評価できない面もある。
 物価上昇分を考慮すれば、3%台の賃上げでも十分ではないとの見方ができる。今の賃上げの勢いを維持できるかが問われよう。
 中小企業の賃上げ見通しは、楽観できない。東京商工リサーチの調査では、賃上げを予定する中小企業のうち、賃金を一律に引き上げるベースアップを実施するのは半数程度だった。賃上げ自体を実施しないとの回答も2割あった。
 最大の課題は、原材料費などの高騰を商品価格に転嫁しにくいことだろう。価格を転嫁できる環境づくりが急がれる。生産性そのものの向上にも取り組むことが欠かせない。
 政府は経済界、労働団体の代表と協議する政労使会議を8年ぶりに開き、岸田文雄首相は、中小企業の賃上げへ「政策を総動員して環境整備に取り組む」と述べた。強い指導力を求めたい。
 大手企業が軒並み賃上げする状況に、本県など地方は危機感を強めなければなるまい。追随できなければ賃金格差の問題はさらに深刻化する。行政、金融機関、商工団体などが地域ぐるみで事業者支援に臨む必要がある。

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