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2023.03.23 00:04

【K+】vol.195(2023年3月23日発行)

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K+ vol.195 
2023年3月23日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter197 中西なちお
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.197 中村りか
・特集 鰹節と生きる|竹内商店
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉41
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.69|葉ニンニク@須崎市
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第四十二回
・+BOOK REVIEW
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント
・なにげない高知の日常 高知百景

河上展儀=表紙写真


特集
鰹節と生きる
竹内商店

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真


祖父、父、息子へ。
時を超えて伝わる、
日本の食文化を支える
唯一無二の土佐の味。





幻の土佐節の復活

 鰹節の最高級品「本枯節」。江戸時代、この本枯節で取った“だし”が、日本の食文化の一つとして大きく発展したとされています。産地の土佐で、これまでの製法を改良した改良土佐節が生まれ、大阪、江戸と流通。高く評価され、土佐節は本枯節の三大名産品の一つと称されていたそう。そんな誇れる時代から一転、約15年前、業界では「土佐節はなくなった」とささやかれるまでに出荷量が減少。その復活に努めた一人が、土佐市宇佐町の竹内商店2代目・竹内昌作さんです。
 竹内商店は、1947(昭和22)年に昌作さんの父・覚さんが創業。当時20軒ほどの鰹節屋があり活気づいていましたが、次第に他社が廃業や手間のかかる本枯節作りをやめて、生節中心の製造に変更。同じく岐路に立たされた昌作さんでしたが、「これまで作ってきた物を作り続ける」と決め、より高品質の土佐節を作ろうと研究を始めます。何度も失敗した後に納得の品が完成し、約10年前から安定的に出荷できるように。2021(令和3)年には、幻といわれていた土佐節の製造技術が国の登録無形文化財に登録されます。
 今、その登録された製造技術で土佐節を作るのは竹内商店のみに。その貴重な技は息子へと受け継がれています。


左から2代目妻・竹内由美さん(68)、2代目・昌作さん(70)、3代目・太一さん、次男・仁了さん(35)

左から2代目妻・竹内由美さん(68)、2代目・昌作さん(70)、3代目・太一さん(37)、次男・仁了さん(35)



兄弟が伝承する丁寧な物作り

 「祖父が宇佐を離れずに作り続けてきた土佐節を残していきたい」と語る長男で3代目の太一さん。関西の企業で勤めた後、30歳を機に帰郷して製造に携わり、今は経営と営業を担当。「父がしてくれたように、次の代にバトンタッチしたい」と話す次男の仁了さんは、大学で水産学を学び、関東の鰹節販売会社で勤務後、5年前に家業に入り、製造を担います。鰹を含めた資材の高騰、高齢化による働き手不足など、課題が多い難しい時代の中、残すためにできることを兄弟は前向きに模索。脈々と伝わってきた土佐節作りの魂は、確かに2人の心に宿っていました。
 土佐節を作るのは良質の鰹が入った時。朝から約10人のスタッフで一斉に作業に取りかかります。土佐節の製法である「土佐切り」で鰹を捌(さば)き、籠に並べ、煮ていきます。分担された仕事に取り組むスタッフの無駄のない動きのなんと美しいこと。「バラ抜き」や「そくい」の工程を経て、いよいよ焚(た)き納屋に入れて約1カ月いぶします。その後、本枯節の特徴であるカビ付けを行い、天日干しする工程を4回して、やっと半年後に商品が完成するのです。
 「いい物を作ろうとしたら一切簡素化できません。手を抜くとそれなりの商品にしかならん。それぐらい、土佐節は正直」と、丁寧に作ることが最も大切というのが昌作さんの教え。「鰹は毎回違います。いぶす際の火加減、天候に左右される天日干しなど、できるまで気が抜けません」と仁了さん。今は、ほぼ現場を任され、自身が納得できる味が作れるように技をその身に刻みます。


チチコやハランボなども全て取り、他の商品に。頭以外全て使う無駄のなさ

チチコやハランボなども全て取り、他の商品に。頭以外全て使う無駄のなさ


傷部分が広がらないよう鰹を新聞紙で巻き補強しながら、丁寧に籠に並べる工程「籠立て」

傷部分が広がらないよう鰹を新聞紙で巻き補強しながら、丁寧に籠に並べる工程「籠立て」


身を崩さないよう毛抜きで小骨を抜き、皮も取り除く「バラ抜き」

身を崩さないよう毛抜きで小骨を抜き、皮も取り除く「バラ抜き」







他地域の鰹節に比べてスモーキーな味がするといわれる「土佐節」。削りたてをごはんに載せてぜひ

他地域の鰹節に比べてスモーキーな味がするといわれる「土佐節」。削りたてをごはんに載せてぜひ




プロフィール
竹内太一さん
竹内商店の3代目で現専務取締役。関西の企業で勤めた後、30歳を機に家業に入り、土佐節作りを学んだ後、経営全般を担うように。土佐市出身。37歳


家庭料理で気軽にだしを

 時間をかけて作られた土佐節は、料亭やそば屋、家庭へ。「鰹だしは、他の味を邪魔せず、塩なしでもうまみを引き立ててくれます」と太一さん。「だしを取るのはハードルが高いと思う人が多いですが、料亭のような料理を家で作るわけではないから、気軽にやってほしい」と言います。おすすめ料理は「カレー」。竹内家では、母・由美さんが取っただしで野菜を煮込んで作るカレーが定番です。
 天然の味を家庭で味わってほしい理由に、「現代食は味が濃く、多くの人がその味に慣れている」と感じることがあるそう。昨年、新たに売り出したおかず味噌「土佐のぶしみそ」には、鰹の生節や宗田節だしを使い、着色料、保存料は不使用に。本来の自然のうまみを食卓で楽しんでもらうためのアイデアを形にもしています。


鰹を傷めないよう、つり上げて素早く切って三枚におろす独特の工程「土佐切り」

鰹を傷めないよう、つり上げて素早く切って三枚におろす独特の工程「土佐切り」



日本のうまみを未来へ伝える

 もう一つ、力を入れたいのが、土佐節を削る体験教室。目の前で削り、削りたてを出すと大人も子どもも喜んで食べるそう。日本人の体に刻まれたうまみを感じる力。それを体験できる場を広げていきたいと太一さんは話します。「削りたての鰹節をご飯に載せて、そのまま食べてみてほしい。鰹本来の味がして、簡単でおいしい。コンビニが簡単便利とされる今ですが、発想を変えれば鰹節を削るのも簡単便利でエコ。昔そうだったように、家庭で削って食べる人が増えるとうれしいです」
 日々、土佐節に向き合い、その魅力を伝えつつ、目指すは100年続く鰹節屋。「丁寧な物作りを続ければ残るはず」と足元を見ながら進む兄弟の姿がそこに。祖父、父、息子、そして次の代へ、土佐の味は受け継がれてゆきます。

国の登録無形文化財に登録された「土佐節の製造技術」。「昔から土佐節を作ってきた地域全体の功績。宇佐の文化として土佐節を発信したい」と太一さん

国の登録無形文化財に登録された「土佐節の製造技術」。「昔から土佐節を作ってきた地域全体の功績。宇佐の文化として土佐節を発信したい」と太一さん


焚き納屋で約1カ月いぶす「焙乾」の工程。まきを使うのは、土佐で改良された製法

焚き納屋で約1カ月いぶす「焙乾(ばいかん)」の工程。まきを使うのは、土佐で改良された製法



風味が高まる「カビ付け」を行い、その後、より熟成をさせるため、節を天日に干す「日乾」の工程へ

風味が高まる「カビ付け」を行い、その後、より熟成をさせるため、節を天日に干す「日乾」の工程へ


●読者プレゼント
枯本節削り1袋を5人にプレゼント。ご応募はプレゼント応募フォームよりどうぞ。




◎竹内商店
土佐市宇佐町宇佐2824-3
問/088-856-0129
営/8:00〜17:00
休/土・日・祝
HP/https://tosa-tkkt.com
Instagram/@takeuchisyoten.ltd

〈取扱先〉
自社、海訪屋、かつお船、
ひろめ市場内土佐黒潮水産(高知市)
地のもん市場ハレタ(土佐市)、自社HPなど

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