2023.03.17 08:40
日米友好人形、今後も大切に 保管ケースを女性グループが寄贈 高知の室戸市・佐喜浜小
新たなケースに収まった「青い目の人形エミリー」を見守る女性グループのメンバーら(写真はいずれも室戸市佐喜浜町の佐喜浜小学校)
県内で唯一残る貴重な人形
青い目の人形は1927年、米国のシドニー・ギュリック博士が全国各地に贈った。当時は米国内で反日感情が高まっており、状況の打開を試みた博士は「世界の平和は子どもから」の理念を掲げ、実業家の渋沢栄一らと協力して約1万2千体を寄贈した。
県内には同年3月、187体が届き、各地の小学校に贈られた。しかし、41年の太平洋戦争開戦後は、米国を敵視する風潮が急速に広まり、人形を焼却したり、竹やりで突かれたりして処分されたという。
佐喜浜小では75年に、校舎の新築に伴い教具室の整理していたところ、偶然に人形を発見。以後は県内で唯一現存する人形として、同校の校長室で大切に保管されてきた。
同校は長くガラス製のケースで保管してきたものの、蛍光灯の紫外線による劣化や地震での破損が懸念されていた。そこで、エミリー人形の物語を紙芝居で伝える活動を行っている女性グループ「DKGジャパンステイト」が、紫外線をカットするカバーが付き、より頑丈なアクリル製のケースを寄贈した。
同校で行われた贈呈式には、同グループの岡敦子さん(67)や同校の6年生らが出席。真新しいケースに収まる人形を見守った山本永太郎君(12)は「6年間、私たちの成長を見守ってくれた存在。これからも大切にしてほしい」とにこやかに話した。
「人形に罪はない」と処分されずに隠された人形は、現在全国でも330体しか残っていない。岡さんは「日米の先人たちが人形を交換した思いや戦争の悲惨さを広く知ってもらいたい」と話し、2023年度には県内の教員らが授業で活用できるよう資料集や指導案を作成するという。(板垣篤志)