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2023.03.16 08:00

【全人代閉幕】深まる独裁色を懸念する

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 周囲にブレーキ役さえ見当たらず、国内外で強権的な動きを強めることにならないか。個人への権力集中が進み、深まる独裁色に懸念を禁じ得ない。
 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が、国務院(政府)の新体制を選出して閉幕した。習近平国家主席の3選に加え、確執がささやかれた李克強氏の後任首相に李強氏を選ぶなど、習氏の側近らが要職を占めた。昨年10月の共産党大会を経て発足した最高指導部に続いて、習氏が政府人事も主導し、権力基盤を盤石にした。
 中国は2018年の全人代で、連続2期10年までとする国家主席らの任期規定を撤廃。3期目入りは1949年の建国以降、初めてとなる。さらなる長期支配を視野に入れているとの見方もある。
 習氏はこれまで反腐敗闘争を展開し、世論の支持を得るとともに、政敵を排除してきた。従来、共産党トップとナンバー2の間には一定の緊張関係がみられたが、習氏が権力基盤を固めるなかで、李克強前首相の存在感は低下。後任に側近を登用して、突出した立場を確立した。
 全人代では、2023年の国内総生産(GDP)成長率を5・0%前後とする新たな目標を設定したが、李新首相も認めた通り、達成は容易ではあるまい。新型コロナウイルス禍からの回復が期待されるものの、中国経済の足元は盤石とは言いがたい。
 中国政府はここ数年、習氏の掲げた「共同富裕」を前面に押しだし、成長の原動力となってきた不動産やIT業界への規制を強化。ゼロコロナ政策に伴う都市封鎖と相まって景気減速を招く要因となり、22年の成長率は3・0%にとどまった。
 指導部内で習氏への異論が許されない空気がまん延すれば、同じ轍(てつ)を踏む可能性も高まろう。民間企業の萎縮が一層広がって、活力を損ないかねない。まずは、強権的な経済政策への不安を払拭しなければならない。22年に人口が減少に転じ、今後は労働力確保も課題になってくる。将来をにらんだかじ取りが求められる。
 台湾問題も気がかりだ。習氏は全人代での演説で、「祖国統一のプロセスを断固として推進する」と改めて強い意欲を示した。米国へのけん制の意味もあろうが、長期支配をもくろむなかで、習氏が台湾統一を国内の求心力維持に利用しかねないとの懸念もくすぶる。
 国際社会では、中国が「世界秩序に挑戦を突きつけている」との警戒感が漂う。習氏の演説に対して台湾では反発の声が上がったが、地域の緊張をむやみにあおる言動は、中国脅威論に自ら現実味を持たせるだけではないか。
 日本も沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に中国艦船の侵入が相次ぐ。当然警戒は怠れない。一方で、中国は最大の貿易相手国でもあり、経済的な関係は切っても切れない。単純な脅威論に陥ることなく、隣国として冷静に向き合っていく必要がある。

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