2023.03.14 08:00
【マスク着用緩和】油断禁物、混乱も回避を
社会経済活動の再開はもちろん重要だ。だが、国内の1日当たり新規感染者は直近1週間平均で8千人前後に上る。緩和で感染者は増加すると指摘される。油断は禁物だ。
個人判断としながら、着用が推奨されるケースがあったり、同じような施設や状況でも求められる対応が異なることがある。3年以上続いたマスク生活からの転換に戸惑う人も多いことだろう。
政府はもちろん、人が集まる施設や事業所などは引き続き、感染対策への目配りが欠かせない。同時に、混乱を招かないよう分かりやすい情報提供にも努めてもらいたい。
着用を推奨するケースとしては、医療機関や高齢者施設を訪れる時や、混雑した電車やバスに乗る時などが例示された。着用の緩和で最も警戒しなければいけないのが、高齢者や基礎疾患のある人の重症化だ。マスクの効用を改めて周知徹底し、ワクチン接種などの対策も併せて進める必要がある。
小売業やサービス業、イベント興行などでは、着用は客の任意とする対応が主流のようだ。だが、混雑時には着用を求めるという施設などもあり、全てが一律というわけではない。個人個人が、自分の置かれた環境の感染リスクを積極的に判断していくことも基本となる。
一方、同じ状況下でも着用するかしないか、人によって対応が分かれる場合もあろう。それでトラブルになってはいけない。互いの意思を尊重し、着脱を押しつけるようなことがないようにしたい。
4月1日から着用を緩和することになっている学校教育活動の現場では特に、他の児童生徒との同調圧力が生まれやすいとされる。教員や保護者は注意するべきだ。
政府は5月8日、新型コロナの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の5類に移行する。マスク着用緩和はそれに先行した。ウィズコロナへ、段階を踏んでいくということだろう。
だが一連の対応の決定に当たり、科学的な根拠が示されたとは言いがたい。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)をにらみ、脱マスクが先行する国際情勢に速やかに並びたかったとする政治的意図が指摘される。
これに医療サイドからは反発もある。やはり基本となるのは、科学的な知見に基づくリスク判断だ。柔軟な対応が必要になった場合はそれを選択肢から外すべきではない。
5類に移行すれば、検査や外来診療、入院に患者負担が生じる。検査や診療控えにつながる恐れがある。また、診療は一般医療機関に広げられる方針だが、対応できないとの声も少なからず上がっている。
5類移行は、これらの課題解消が前提となろう。