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2023.03.11 05:00

【大震災12年】備える思いを新たに

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 東北などを激しい揺れと巨大津波が襲った東日本大震災から、きょうで12年となる。近しい人を失った遺族、かけがえのない古里を奪われた被災者の痛みに心をはせ、災害に備える思いを新たにしたい。
 死者は1万5900人に上り、今も2500人以上の行方が分からない。避難生活の中で命を落とす関連死も3800人近くを数える。東京電力福島第1原発事故のあった福島県民を中心に、なお3万1千人以上が避難を強いられている。
 発生から12年を経てインフラの復旧などは大きく進んだ。だが、被災地の悲しみが癒えたとは、とても言えまい。
 一方で、時間は記憶を風化もさせる。あの津波の光景の衝撃さえ、その例に漏れない。そのことは、関心度を問う近年の世論調査が物語る。
 多くの犠牲の上に残された貴重な教訓まで、風化させるわけにはいかない。高知県も将来、南海トラフ巨大地震での被災が予想される。「3・11」が巡るたびに重みをかみしめ、教訓を役立てる責任がある。
 本県の地震の備えも、東日本大震災を受けて見直しを迫られた。
 発生翌年の2012年に示された国の想定は、黒潮町の最高津波高が34・4メートルと発表されるなど厳しい内容で、本県の死者数は最大4万人以上と試算された。
 それに対して県は対策を講じ、3年ごとに作り直してきた行動計画は今5期目を迎える。「命を守る」「命をつなぐ」対策が進んだ結果、想定死者数は4300人の目標を掲げられる段階にまでなった。
 ただ、減災はハード整備を中心とした「公助」による面が大きく、「自助」「共助」を促す取り組みは苦戦していると言っていい。
 県民意識調査では、避難のタイミングについて「揺れが収まった後すぐ」と答える人は7割前後で一進一退している。家具の固定化率も4割に届かず、伸び悩む。また、新型コロナウイルス禍により自主防災活動も停滞している。
 県民への周知や啓発はこれまでも繰り返し行われてきた。それでも浸透しないのなら異なるアプローチも考えねばなるまい。
 地震発生の可能性が高まった際に気象庁が発表する「臨時情報」も、県民の認知度は2割前後で低いままだ。発表時の混乱を防ぐためにも、周知を急ぐ必要がある。
 「命を守る」「つなぐ」の次の段階となる「生活を立ち上げる」対策では、23年度から、事前復興まちづくり計画の策定作業が本格化した。想像力が試される作業だが、実効性を追求してもらいたい。
 「時間の流れ」がもたらす課題は記憶の風化だけではないだろう。訓練や防災学習も長く続けば、マンネリ化、形式化して緩みが生じ、それが目的になりがちだ。同じことばかり繰り返していると柔軟な対応ができなくなる弊害も指摘される。
 震災から10年以上が過ぎた。ステップアップする必要はないか。今の防災活動を問い直すことも重要だ。

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