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2023.03.10 08:00

【宇宙飛行士候補】月の探査が待っている

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 この2人が近い将来、月面に降り立ち、宇宙の新しい可能性を日本語で発信してくれるのだろうか。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新たな宇宙飛行士候補に、世界銀行職員の諏訪理(まこと)さんと、医師の米田あゆさんが選ばれた。
 2人は2年間の訓練を行い、宇宙飛行士に正式に認められれば、国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在のほか、米国主導の月面有人探査「アルテミス計画」に参加する可能性がある。
 月に日本人が降り立てば、宇宙との距離は一気に縮まり、科学技術への関心も高まる。子どもたちにも夢を与えることになるだろう。倍率2千倍の狭き門をクリアした2人に、歴史を切り開いてもらいたい。
 宇宙飛行士の募集は13年ぶりだった。現在6人いるJAXAの飛行士は平均年齢が52歳を超え、アルテミス計画が活発化する2030年ごろの体制が不安視されていた。
 JAXAは今回の募集に当たり、08年の前回まで「理系の大学卒」としていた応募資格を撤廃し、学歴不問とした。多様な人材確保を目指すためで、結果的に、過去最高の4127人から応募があり、理系以外が約2割を占めたという。 
 宇宙での活動内容は幅広くなっており、機械操作なども自動化が進む。理系・文系の学歴で区切る意味が薄れているのは事実だろう。募集要件の緩和で、一度は諦めた宇宙飛行士への夢を追いかけた人も少なからずいたに違いない。
 門戸を広げたことは、宇宙活動への関心や理解を広げる上でも意義があったのではないか。
 諏訪さんは、世界銀行の上級防災専門官で46歳。青年海外協力隊でルワンダに派遣された経験があり、世界気象機関(WMO)にも所属した。史上最年長での試験合格で、多彩な経験は多国籍チームで展開される宇宙活動で期待される。
 米田さんは逆に、史上最年少タイの28歳。東京大学医学部を卒業し、日本赤十字社医療センターの外科医を務める。女性候補は24年ぶり。向井千秋さん、山崎直子さんに続いて3人目となる。
 JAXAは、2人のキャリアなどを挙げて「多様性」を強調する。一方、理系出身の高学歴者というこれまでの枠を出なかったのも事実だ。欧州では障害者の飛行士候補も選ばれている。宇宙でのミッションの変化を念頭に、人材の多様性を広げる努力を続けてもらいたい。
 2人はアルテミス計画に参加する可能性が高いとされる。ただ、日本人宇宙飛行士がどの程度の頻度で宇宙に行けるかは見通せないのが実情だという。09年にJAXAの飛行士に認定された3人とも、ISSへの長期滞在は1度にとどまる。
 JAXAは今後、5年ごとに飛行士を募集する方針を示した。しかし飛行機会の確保という課題もある。機会確保には国際的な交渉力が鍵を握る。日本は、先行する知見などを生かし、宇宙プロジェクトへの貢献度をアピールしていきたい。

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