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2023.03.09 08:40

昨夏の敗戦 糧に―逆境で粘れ 高知20度目センバツの軌跡(1)

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昨夏の高知大会決勝、明徳戦。9回1死満塁で三振を喫した門野。「あの決勝を忘れない」と誓った(春野球場)

昨夏の高知大会決勝、明徳戦。9回1死満塁で三振を喫した門野。「あの決勝を忘れない」と誓った(春野球場)

 バッターボックスの門野結大は焦っていた。スタンドの大歓声も聞こえない。「僕のせいで負けられない」。スタメン唯一の2年生に重圧がのしかかっていた。

 昨夏の甲子園高知大会決勝の明徳義塾戦。7―8で迎えた九回裏1死満塁。一打逆転か、併殺で試合終了か。剣が峰に立った。

 相手エースの吉村優聖歩は尻上がりに調子を上げていた。1球目にスクイズを試みるもファウル。5球目、136キロの外角高めのボール球に手を出し、空振り三振。次打者も三振で、試合は終わった。

 敗戦直後は実感が湧かなかった。ベンチ裏で3年生が泣いていた。強打を誇った3年生は優しかった。そんな先輩たちが涙ながらに言った。「来年は頼んだぞ」「次は頑張れ」―。

 「僕が打ったら勝てたのに」。悔しさが込み上げ、涙が止まらなくなった。

 ◇   ◇ 

 「絶対打たないといけない場面。それを普段からしっかりとイメージしてなかった」

 昨秋、門野はそう述懐しながら言葉をつないだ。「あの夏の決勝を絶対忘れへんようにと、毎日、毎日思ってます」

 それは他の2年生も一緒だった。

 昨夏の高知大会準決勝、中村戦。2―3と1点ビハインドの九回裏2死一塁。フルカウントで構えた4番の高橋友は微動だにせず、威風すら放っていた。そして次の直球を捉え、レフト線へ同点二塁打。5番西野啓也も勝負強い打撃で続き、逆転サヨナラ勝ちを収めた。

 チームを救う主軸の連打に、先発のマウンドに上がった2年の中嶋奏輔も救われた。初回に2失点し、三回で降板していた。試合直後は「(負けずに)ほっとした」が、決勝戦後に後悔が襲ってきた。

 決勝で先発することになる川竹巧真が、その試合、八回から登板していたからだ。「準決勝で自分がいい投球をしていたら、川竹さんはその試合登板せず、疲れをためずに決勝ではもっと投げられたはず」。夏の甲子園を逃した原因の一端は自分にあると考えるようになった。

 ◇   ◇ 

 決勝で敗れた翌日、1、2年生55人でミーティング。新チームの目標とテーマを何にするか話し合うためだった。

 「『逆境で粘れ』でいいんじゃない?」

 ムードメーカーの三枝律彦が言った。あの決勝のスタンドで声を枯らしていた三枝なりの思いがあった。2点リードしながらも六回に6点を奪われて明徳の勢いにのまれ、押し切られた。「勝ってたところで粘り切れなかった。僕らはそこを強くする」

 夏の高知大会後、浜口佳久監督は「3年生は力があった。それでも夏には甲子園に行けなかった。全てで3年生を超えないと明徳には勝てない」と気合を入れた。

 その言葉を思い出しながら、門野は「僕たちは力がない。ロースコアでピンチの場面も多くなる。そういう時に粘り強く、守って勝とう」と三枝の意見に応じ、全員が納得した。

 目標はセンバツ8強以上。前年16強だった先輩たちを超えることだ。

 「逆境で粘れ」―。夏の敗戦を糧に新チームが始動した。

 ◆   ◆ 

 2年連続20回目のセンバツに高知が挑む。甲子園までの道のりをたどる。(五十嵐隆浩)

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