2023.03.08 08:00
【H3発射失敗】原因究明し次こそ成功を
きのう、種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられたが、離陸後に2段目エンジンが点火せず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が指令破壊信号を送った。
日本の今後の宇宙戦略の中心的な存在として期待が大きかっただけに、痛恨の結果だと言える。
各国が宇宙開発競争でしのぎを削るなか、日本の開発計画が大幅な見直しを迫られるのは必至だ。H3の開発工程は、既に予定をずれ込んでもいる。文部科学省は対策本部を設置した。原因解明を急ぎ、次の成功につなげなければならない。
H3は、2001年に投入されたH2Aロケットの後継機で、JAXAと三菱重工業などが14年、開発に着手した。国家プロジェクトに位置付けられ、これまでに2千億円超の開発費が投じられてきた。
商業や防災、安全保障目的の衛星利用が進むなど宇宙産業は拡大しており、日本は国内外からの打ち上げの受注を目標に掲げる。国際競争力の確保へ、H3は運搬能力を強化しつつ、民生部品を使って開発費を抑え、H2Aの半分程度までコストダウンを図った。
ただ、開発は順調とはいえなかった。当初は20年度に1号機が打ち上げられる予定だったが、エンジン燃焼試験でトラブルが続発。政府宇宙政策委員会の委員から、設計変更を求められたこともあった。
2月に予定より約2年遅れでようやく初の打ち上げにこぎ着けたが、発射寸前に機器の誤作動で打ち上げを中断していた。その仕切り直しとなった今回、関係者は入念にチェックし、万全を期したことだろう。それだけに、失敗の事実が重くのしかかる。
H3には、災害時などの被害状況確認も行える地球観測衛星「だいち」3号も搭載されていた。運用の見直しは避けられまい。ほかにも、衛星を使って予定している事業が影響を受ける可能性がある。
打ち上げ失敗の原因は現時点では不明だ。部品を減らすなどしてコストを削減した影響はなかったのか。十分に検証し、説明責任も果たしてもらいたい。
日本でのロケット打ち上げはこれまで、H2Aが46回の発射で1回しか失敗がないなど、高い技術力を示してきた。しかし昨年10月には、H2Aと並ぶ国産主力機で、固体燃料の小型ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げでも失敗している。技術力への信頼が揺らぎかねない状況にある。
一方で、宇宙開発、ロケット開発は、どの国も失敗と挑戦を重ねて発展してきた歴史がある。開発現場は萎縮することなく、前を向き続けてもらいたい。
ただ、国際競争の中で悠長に構えていられる状況でもない。結果を求めるプレッシャーが弱すぎても強すぎてもいくまい。当局のバランスのとれたマネジメントが重要だ。