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2023.03.07 08:00

【徴用工解決策】日韓連携を地域の安定へ

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 戦後最悪と言われる日本と韓国の関係は、改善に向けて新たな局面を迎えた。曲折も想定されるが、冷え込んだ関係のさらなる長期化は回避しなければならない。懸案の解決は急務だ。東アジア地域の安定へ正常化への動きを進めたい。
 韓国政府が元徴用工訴訟問題の解決策を発表した。被告の日本企業2社の賠償支払いを韓国政府傘下の財団が肩代わりする。
 北朝鮮が核・ミサイル能力を高め、中国やロシアは覇権主義的な姿勢を強めている。これらに対応するために日米韓の連携を強化する必要性が高まるが、日韓が反目することに危機意識が向けられる。
 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は昨年8月の「光復節」の演説で、日本を「自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせて進む隣人」と位置付けるなど、関係改善に強い意欲を示してきた。昨年11月には約3年ぶりの日韓首脳会談が正式に開かれ、元徴用工問題の早期解決の方向で一致している。
 韓国最高裁は2018年に2社に賠償金支払いを命じた。日本側は1965年の日韓請求権協定で元徴用工らへの賠償問題は解決済みとの立場で、判決は国際法違反と指摘する。韓国側が求めた両社による財団への寄付を拒否した。
 財団が肩代わりする今回の韓国案の財源は、日本の経済協力資金で成長した韓国企業の出資などで賄う計画だ。日本企業への資金拠出も促す考えで、日本政府も寄付は容認する姿勢を示している。
 韓国政府は、あくまで被告企業による賠償履行を求める原告や韓国世論の反発を踏まえ、日本に「誠意ある呼応」を期待する。これに対して、岸田文雄首相は歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継いでいく考えを表明している。
 尹氏の訪日と、首相との首脳会談が浮上している。対話を重ねることが懸案解消に重要だ。2019年に日本が発動した半導体材料の対韓輸出規制強化の解除なども検討される。元徴用工問題とは異なる話だが、諸問題を包括的に解決する方策を模索していくのは現実的だろう。
 日韓双方に事態を動かそうとする姿勢があることを歓迎したい。ただ、韓国内では解決策に原告や世論の批判は強いままで、全面的な支持が得られている状況ではない。歴史問題を巡る日本側の姿勢への反発は折に触れて高まる。
 日本国内でも、元慰安婦問題の解決をうたった日韓合意を韓国が白紙化したことへの反発など、韓国側の対応に不信感が向けられる。尹政権が国内の合意形成をしっかりと図らなければ解決は迷路に入る。
 2社が会員の経団連と韓国の経済団体が若者の交流を後押しする基金を創設する計画もあるようだ。関係改善へ多面的な取り組みが重要だ。
 韓国の朴振(パクチン)外相は「未来に向かう新たな歴史的な機会だ」と強調した。安全保障や経済など実利的な側面で動くだけでは真の関係の改善は望みにくい。相互不信の解消へ努力が求められる。

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