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2023.02.25 08:00

【植田氏が所信】丁寧な説明で混乱回避を

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 大規模な金融緩和策の副作用が指摘され、一方で出口戦略も簡単ではない。安定的な物価と賃金の上昇をどう実現するのか、その姿勢に関心が高まるのは当然だ。丁寧な説明と経済の動向を見極めながらの政策運営が求められる。
 日銀総裁候補の植田和男氏が衆院の所信聴取に臨み、金融緩和を継続して経済を支える考えを表明した。政府の人事案提示後、金融政策に関する見解を初めて公式に示した。
 日銀はデフレ脱却を図り大規模緩和策を進めた。金利を低くして景気を刺激し、株式相場を支え円安効果を狙った。物価上昇率は安定して2%を上回ることを目標とした。
 当初は2年での実現を目指したが、先送りを重ねてきた。ところが、新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開やロシアのウクライナ侵攻を受けて、資源や輸入品価格が高騰へと転じている。
 インフレ抑制へ金融引き締めに動く米欧とは異なり日本は緩和を継続し、金利差から円安が急激に進んだことも影響している。1月の消費者物価は前年比4・2%上昇と高い伸びで、上昇は17カ月連続となる。
 賃金上昇が伴わない物価高が暮らしを直撃している。これについて植田氏は、2%の物価目標達成にはなお時間を要するとし、当面変更する必要はないと位置付けた。
 判断の背景として、食料や資源価格高騰の影響が和らぎ、2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下するとの予測を挙げた。目標の早期実現を掲げた政府との共同声明の見直しも考えていないとした。
 植田氏は構造的に賃金が上がる状況をつくり、持続的に物価を安定させていく考えを表明した。金融面からの取り組みだけでは難しいだけに積極的な対応が必要となる。
 一方、物価目標の実現を見通せるようになれば金融政策の正常化に踏み出すことができると述べ、現在の金融緩和策を将来、修正する可能性に言及した。黒田東彦総裁が進めてきた大規模緩和策は適切だと評価している。早期の緩和縮小は否定して混乱を抑えつつ、取り得る政策の柔軟性は確保する思惑もみえる。
 総裁の交代で政策が変更されるのかが注目された。東京株式市場はきのう、大型金融緩和が続くと好感して値上がりした。
 民間機関の企業調査では、金融緩和について縮小希望と現状維持がほぼ並んでいる。修正の必要性を感じながら、急激な政策転換が引き起こす混乱を警戒する様子がうかがえる。丁寧な対応が不可欠だ。
 対話の重要性は高まっている。昨年末に日銀が事実上の利上げを決めた際には、市場は唐突との受け止めが広がった。混乱は期待する結果を遠のけてしまいかねない。
 日銀は金利の抑え込みへ大量の国債を購入し、発行残高の半分以上を持つ。景気は下支えされるが、市場機能の低下が指摘された。日本政府の財政規律を緩めたとの批判は根強い。これまでの対応の検証も重ねていく必要がある。

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