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2023.02.23 08:00

【侵攻から1年】ウクライナ和平へ結束を

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 戦禍が犠牲者を増やし、恐怖と極寒の冬を過ごす市民は満足な暖房さえない生活を余儀なくされている。国家主権を踏みにじる行為は容認できず、国際秩序を揺るがせた責任は重い。早期の停戦と撤収が求められる。国際社会は圧力を強めてその道筋を明確にしたい。
 ロシアによるウクライナ侵攻からあす24日で1年になる。集中攻撃で街や産業基盤が壊されていく。集合住宅や民間施設も狙われ、罪のない市民の死傷が拡大している。
 大勢が国外も含め避難を強いられた。ロシア軍による民間人の虐殺や拷問が証言され、子どもたちがロシアの施設に収容されていると伝えられる。人道危機が深まる。
 ロシアは当初、短期掌握を想定したようだが、ウクライナ側の徹底抗戦で実現しなかった。ロシアは部分動員にも踏み切り、兵力を再編して東部地域で攻勢を強めている。
 昨年9月には一方的にウクライナ東部・南部4州の併合を宣言した。プーチン大統領支持は世論の7割を超える。それだけに、国民が納得する状況をつくらなければ軍事作戦の終結には踏み切りにくいだろう。だが、ウクライナ世論も大多数が勝利を信じ領土での妥協を拒否する。
 ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の確約を求めてきた。プーチン氏はその要求に応じない欧米を批判し、侵攻を自衛の行動だと繰り返し正当化してきた。
 しかし、自国優先の身勝手な姿勢が受け入れられるはずはない。自らの軍事行動がフィンランド、スウェーデンの加盟申請を招き、ウクライナの加盟意欲を強める結果になったことを自覚するべきだ。
 核危機への緊張も高まる。ロシア軍は核関連施設の制圧へと動き、攻撃で原子力災害が危惧される。プーチン氏は核保有国であることを誇示し、核兵器の使用さえほのめかす。取り返しのつかない事態が偶発的に起きかねず、核を振りかざす姿勢は容認できない。
 欧米諸国はウクライナに戦車や弾薬を提供し、ロシア軍の大規模攻撃に対抗する。ロシアには決定的な戦果を上げるほどの戦力がないとの分析もあるが、戦闘の長期化、激化は避けられそうにない情勢だ。
 一方で支援国側にも対応に温度差がうかがえる。強力な兵器の提供は自国の防衛力を低減させかねないだけにためらいがある。戦闘が泥沼化することへの警戒感も根強い。
 ウクライナでは軍の調達を巡る汚職疑惑や高官の解任が報じられた。国内はもとより、国際社会からの信頼が失われれば影響は甚大だ。
 侵攻1年を前にバイデン米大統領はウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談して追加軍事支援を表明した。支援減速への各国の懸念を排除し、民主主義国家の結束を意図した行動とみられる。
 国連安全保障理事会は機能不全を露呈した。国際社会はこの人道危機にどう対処するのかが試される。侵攻長期化の見方が広がる。解決の模索と支援への連携が不可欠だ。

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