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2023.02.21 05:00

【北朝鮮ミサイル】挑発の応酬を憂慮する

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 北朝鮮がまた、ミサイル発射の挑発行為を活発化させている。18日には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下。20日にも弾道ミサイル2発を立て続けに日本海側に発射した。
 3月に予定される米韓軍事演習などへのけん制とみられるが、挑発やけん制のエスカレートは地域の軍事的緊張を高めるだけだ。国連安全保障理事会の機能不全など難しい局面だが、あらゆる外交チャンネルを使って対話への糸口を探りたい。
 昨年の1年間で、北朝鮮は過去最多となる37回ものミサイル発射に及んだ。より射程が長いICBMのほか、探知や迎撃が難しいとされる「極超音速ミサイル」などを次々と発射。関連技術の向上をみせつけた。新たな核実験の恐れもくすぶり続けている。
 北朝鮮は今年の元日以降、「軍事行動は自制」する姿勢を示していた。しかし、3月中旬に11日間連続で実施される米韓合同軍事演習を「歴代最大規模」と警戒。先手を打ってけん制に出た格好だ。
 18日の「火星15」とみられるICBMは高角度のロフテッド軌道で発射。北海道渡島大島の西方約200キロのEEZ内に落下させた。幸い航空機や船舶に被害は確認されなかったものの、住民の不安をあおる飛行コースは悪質極まりない。
 さらに、米韓が19日に行った戦略爆撃機や戦闘機の合同訓練に対抗し、20日にも2発の弾道ミサイルを発射。挑発の応酬が憂慮される事態となってきた。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(キムヨジョン)党副部長は「太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は米軍の行動にかかっている」と警告した。
 日本列島を越える形での弾道ミサイル発射に言及する威嚇には憤りを禁じ得ないが、北朝鮮の「本音」も見て取れる。通常軌道であれば米全土に達する射程1万4千キロ超のICBMを威嚇の手段に用いたことからも、一連の挑発行為の狙いが米政権なのは明らかだ。
 だが、北朝鮮がいくらミサイル技術を誇示したところで、米国が譲歩して経済制裁を緩和するはずがない。北朝鮮国内からは深刻な食糧難も伝わる。国民が危機的な状況から脱するためにも、為政者は現実的な対応を考えるべきではないか。
 一方で、国際社会にとっても北朝鮮の孤立は望ましい状況ではあるまい。核・ミサイル開発を進展させる時間的な猶予を与える結果となってしまった。日本政府は米韓との密接な連携を強調するが、手詰まり感が漂う。国連安保理も米ロ、米中の対立が深まる中では、有効な対応を見いだすのは難しい。
 米バイデン政権は「前提条件なし」での対話を呼び掛けてきたが、北朝鮮は米国側の「敵視政策」撤回を求め続け、没交渉に陥った。その溝を埋めない限り、北朝鮮は地域の不安定要素となり続けよう。国際社会も現実を直視し、対話のテーブルを用意する必要がある。

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