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2023.02.23 00:04

【K+】vol.194(2023年2月23日発行)

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K+ vol.194 
2023年2月23日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter196 中西なちお
・特集 スパイスの魔法|錆と煤 満寿~Kotobuki~店
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉40
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.68|沖ウルメ@高知市
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.196 有澤あゆみ
・日々、雑感 ある日 vol.26
・気の向くままに お気軽 山歩き ;41
・ちいさいたび #13
・K+ cinema 記憶のなかの映画館㉑
・+BOOK REVIEW
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第四十一回
・Sprout Table vol.12 イタリア料理 Regalo●レガーロ
・Information
・今月のプレゼント
・シンディー・ポーの迷宮星占術

河上展儀=表紙写真



特集
スパイスの魔法
錆と煤 満寿〜Kotobuki〜店

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真


南インド料理を通して、日々に楽しさを届ける
魔法使いのような料理人のこと。

酸味のあるスープ「ラッサム」や、豆のカレー「ダル」などが盛られたミールス。「高知の野菜がおいしい」と、使用する野菜は高知産がメイン

酸味のあるスープ「ラッサム」や、豆のカレー「ダル」などが盛られたミールス。「高知の野菜がおいしい」と、使用する野菜は高知産がメイン



南インド料理に魅せられて

 物作りが好きな父母の影響もあり、クリエーティブな仕事をしたいと願ってきた少女は、やがて南インド料理と出合い、スパイスに魅せられて料理人に。「誰もやってないことを料理や空間を通して表現して、エンターテインメントを発信する人でありたいです」。そう力強く話す山田和子さんの姿を見ていると、こちらもパワーが湧いてきます。
 山田さんは「錆(さび)と煤(すす)」の店主。2017(平成29)年に南国市に南インド料理の店を、そして昨年、安芸市の祖父母の家兼自転車屋を改装し、2号店の満寿(ことぶき)店をオープンさせました。満寿店で食べられるのは、南インド料理をベースにした創作アジア料理。看板メニューは、カレーと副菜がワンプレートにのり、混ぜ合わせて食べる南インドの定食・ミールスです。
 一口食べると広がるスパイスの風味。辛み、甘み、酸味、そして、サクサク、シャキシャキの食感。いろいろな感覚が押し寄せ、まるで口の中がマジックにかかったよう!
 彩り豊かでスパイス香る料理と、異国を思わせる独特の空間で過ごす時間。それはただの食事の時間ではない、五感で感じるアート作品の中にいるようなわくわく感がありました。




料理はアート


 「頭の中にある物を形にする料理はアートと同じ。スパイスや食材を使って、“おいしい”をセンス良く表現する料理は創作意欲をかき立てます。作って楽しい、おいしいって言ってもらえてうれしい。こんな素晴らしい職業ってない」と笑う山田さん。創造することをなりわいにしたいと模索してきたからこそ、たどり着いた一つの道です。
 山田さんは短大を卒業し、京都の着物問屋で働いた後、京友禅の染め工房で3年修業。それから、アクセサリー作りや絵を描いて路上で販売するなど個人で創作活動を始めます。料理も好きで、本格的に学ぼうと古民家カフェで働き始めた頃に転機が。ある店で南インド料理を初めて口にした山田さん。
 「元々タイ料理など酸味のある料理が好きでしたが、酸っぱいインド料理があることを知って。ミールスの文化も味も面白いし、スパイスの世界は知れば知るほど奥深い。すっかり味のとりこになりました」。その店で働いた後、いつか帰りたいと思っていた高知に帰郷し、自身の店を開くのです。
 進む道に迷い、自信が持てない時期もあったという山田さん。店を持って7年。ありのままの自分を受け入れられるようになった今、前向きなパワーに満ちていると言います。「元気がない人にエネルギーが与えられるような、誰かの毎日にちょっとプラスの面白いエッセンスを加えられる料理を作りたいです」と、独創的なカレーを日々提供。その思いをスタッフも受け継ぎ、皆でお客さんを迎えています。


今年1月に提供された新年プレート。期間限定のメニューもぜひ味わいたい

今年1月に提供された新年プレート。期間限定のメニューもぜひ味わいたい








年中食べられるかき氷は、満寿店のみのメニュー。写真は、食べ応えがある「もっちりチャイクリーム」

年中食べられるかき氷は、満寿店のみのメニュー。写真は、食べ応えがある「もっちりチャイクリーム」




子どもの頃から好きだったさびたトタンを飾って。屋号の由来にも

子どもの頃から好きだったさびたトタンを飾って。屋号の由来にも




自家製ジンジャーエールにミントをたっぷり使った「モヒート風ジンジャーミントジュース

自家製ジンジャーエールにミントをたっぷり使った「モヒート風ジンジャーミントジュース」






プロフィール
山田和子さん
京都の着物問屋で働いた後、染め工房で修業。その後、創作活動をしながら南インド料理を学び、高知に帰郷して「錆と煤」を開業。昨年、2号店を故郷にオープン。安芸市出身。42歳


愛情を込めて料理する

 南インドを旅行し、本場の食文化に触れてきた山田さん。宗教柄、野菜中心の地域もあれば、魚や肉をよく食べる地域もあり、自身のメニューに生かしています。一番心に残るのは、インド人の家を訪ねた時のこと。「ミールスは、味噌汁やご飯と同じで、母が子どもに愛情を込めて作る家庭料理でした」。1児の母でもある山田さんは、料理を作る際の心がけを知ったそう。以来、「自分が本当においしいと感じながら、食べる人を思い作ること」を大切に厨房(ちゅうぼう)に立ちます。
 南インド料理から創作の楽しさを教わった山田さんが、次に目指すのは枠にとらわれない料理作り。「スパイスの知識が身に付いたことで味の幅が広がり、未知の料理を作れる可能性が高まりました。特に満寿店では、実験的な料理も出したいです」






南インドカレーによく使うチリ、ターメリック、クミン、コリアンダーなど、数種類のスパイスが棚に並ぶ

南インドカレーによく使うチリ、ターメリック、クミン、コリアンダーなど、数種類のスパイスが棚に並ぶ




創作と文化発信の場に

 3歳まで安芸市に住んでいた山田さんにとって、満寿店は、祖父母の思い出が残る場所。だから改修はあまりせず、そのままの状態を残しています。武家屋敷や書道美術館など文化的な場所や、内原野陶芸館が近い立地から、「お客さんが観光や物作りを楽しめるような文化発信の場にしたい」と考えています。自身も器が好きで、陶芸を始めたいのだとか。昨年から手がけるアジアが感じられる食の催し「東洋的漫遊祭」など、店のある地域がより面白くなるような、“楽しい”を創造するアイデアも湧き続けています。
 スパイスを自在に使った料理と空間づくりで、心を躍らせてくれる山田さんは、人を幸せにする魔法使いのよう。これからもその料理や新しい取り組みで、訪れる人を笑顔にし続けてくれることでしょう。












布やわらが埋められた土間、赤く塗られた天井など、山田さんのアート作品のような異国情緒あふれる店内

布やわらが埋められた土間、赤く塗られた天井など、山田さんのアート作品のような異国情緒あふれる店内


インドから仕入れた雑貨やスパイス、友人が作るコスメやアクセサリーなども販売

インドから仕入れた雑貨やスパイス、友人が作るコスメやアクセサリーなども販売




◎錆と煤 満寿〜kotobuki〜店
安芸市土居554-6
問/090-2829-5731
営/日・月・火・水(臨時休業あり)11:00~15:00(LO14:30)
※営業日の確認は、
Instagram/@sabito_susu_kotobuki


掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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