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高知新聞PLUSの活用法

2023.02.17 08:00

【原子力規制委】独立性に疑念が膨らむ

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 政治への忖度(そんたく)、日程への配慮は明らかだ。原子力規制委員会が臨時会合で原発の運転期間を見直し、60年を超える運転を認めた。
 政府が関連法改正案を今月下旬にも国会提出するのを踏まえ、規制委内の反対の声を振り切って多数決で決定に持ち込んだ。金看板である組織の独立性が揺らげば、政府の原発政策に対する国民の不信はいっそう高まりかねない。
 福島第1原発事故を踏まえ、原子炉等規制法は原発の運転期間を「原則40年、最長60年」と定める。年数の根拠を問う声はあるにしても、明確な基準を設けたこと自体が原発依存度の低減という民意を象徴してきたといってよい。
 だが、政府は脱炭素社会の実現を名目に、原発の「最大限活用」へと方針を転じた。次世代型原発への建て替えに加え、再稼働に向けた審査に伴う停止期間を運転期間から除外し、60年超の運転を可能にする基本方針を今月閣議決定している。
 規制委が了承したのは、政府の運転延長方針に関わる原子炉等規制法の改正案。規制委が所管する規制法の運転期間に関する規定を削除し、経済産業省所管の電気事業法に移す。改正案の国会提出を前にして、規制委が日程的に追い込まれていたのは間違いない。
 会合では5人の委員のうち、1人が「科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とは言えない」と反対。規制委は政府の運転延長方針に対応するため、30年を超えた原発を最長10年ごとに審査する新制度案をまとめたが、安全性の具体的な評価方法が未定では反対意見が出るのも当然だろう。
 さらに検討の在り方にも、賛成した委員から「外から定められた締め切りを守らないといけないと、せかされて議論してきた」と疑問符がついた。結局、異例の多数決で改正案を了承したが、「日程ありき」で重要な方針転換が進む現状に懸念を禁じ得ない。
 原子力行政を巡っては、規制と推進の双方を経産省が担うゆがんだ構造が事故を防げなかった背景として批判され、独立性をうたった規制委が発足した。その経緯からいって、主体的な判断は規制委の生命線だったはずだ。その根幹がいま、大きく揺らいでいる。
 規制委の立ち位置はむろん、政府との関係で決まる。独立性に疑念を抱かざるを得ない現状は、政府側にも問題があろう。
 今回の制度見直しでは、事務局の原子力規制庁と経産省が非公式に面談を繰り返していたことが内部通報で発覚。資料もほとんど黒塗りで公開した。透明性を欠いた関係が疑念を生むのはやむを得まい。
 そもそも岸田政権の原発活用方針は、明らかに説明が不足している。国民の間に根強く残る原発への不安にどう向き合うのか、国会で十分に説明しなければならない。再稼働は規制委の審査が前提である以上、規制委の独立性をいかに担保するかは重要な論点にほかならない。

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