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2023.02.14 08:00

【刑法犯増加】多層的な対応で抑止を

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 治安のバロメーターと言われる刑法犯の認知件数が2022年は60万1千件余りとなり、前年比5・9%増と20年ぶりに増加に転じた。新型コロナウイルス対策の行動制限が緩和された影響とみられるが、軽視はできまい。
 体感的な治安状況が悪化すれば、社会、経済活動にも影を落としかねない。犯罪に対して厳正に対処することはもちろん、貧困問題への取り組みや教育などで未然に犯罪の芽を摘み取りたい。
 警察庁によると、刑法犯の認知件数は02年の約285万件をピークに減少傾向が続き、21年までは7年連続で戦後最少を更新していた。
 昨年の増加は、新型コロナ禍から社会活動が再開した面が大きいのは間違いあるまい。刑法犯の内訳をみると、自転車盗や傷害、暴行など街頭犯罪が14・4%と大幅に増加していた。人出の多い時期に事件が増える相関関係もあったという。
 ただ、反動増という特殊要因だったにしても、犯罪の増加がゆゆしき事態なのは変わらない。
 凶悪な事件も後を絶たない。昨年は7月に安倍晋三元首相の銃撃事件が発生。強盗は前年より10件増の1148件に上り、各地で相次ぐ広域強盗事件の一部も含まれる。特殊詐欺の被害額も28・2%増の361億円と8年ぶりに増加した。
 こうした事件の衝撃は住民を大きな不安に陥れよう。警察庁が昨年10月に行ったアンケートでは、現状の治安を肯定する回答が68・6%を占めたものの、ここ10年で悪化したと答えた人は67・1%に上った。件数にかかわらず、犯罪がより身近になってきたと感じる人が多いのではないか。
 特殊詐欺など誰もが被害者になり得る犯罪が多発する一方、インターネットなどの発達によって、日常と犯罪との接点も縮まっている。一連の広域強盗事件では交流サイト(SNS)上で募集する「闇バイト」の存在が浮き彫りになった。
 ただ、ネット上の規制や取り締まりをやみくもに強化すればいいというものではないところに、問題の難しさがある。利用者の自由や人権を守りながら、犯罪撲滅への取り組みを進める必要がある。
 それには犯罪の摘発といった対症療法はもちろん、その土壌をつくらないことが重要になってこよう。広域強盗事件の実行犯の一部は、経済的に窮した挙げ句、高額報酬につられてグループに加わったと供述しているようだ。経済格差の解消は、長期的な犯罪の抑止という視点からも欠かせない。
 教育の役割も大きい。このところ飲食店で迷惑行為をする映像がSNS上で問題視されている。そうした動画も本人や周囲にもう少し規範意識が育まれていれば、投稿されなかったのではないか。倫理観は犯罪の大きな抑止力になる。
 治安の良さは、世界に誇れる日本の財産にほかならない。多層的な対策を積み重ねて、長く維持しなければならない。

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