2023.02.10 08:00
【東京五輪談合】組織委の在り方検証せよ
東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、東京地検特捜部は独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、大会組織委員会の大会運営局元次長と、広告大手電通や落札企業の幹部ら計4人を逮捕した。
元次長らは、運営の課題などを洗い出すテスト大会の計画立案業務に関し、2018年5~8月に実施された26件の入札で不正に受注調整した疑いが持たれている。
入札では9社と1共同企業体が計5億円余りで落札した。この受注が本大会の運営委託につながったとして、検察側はその随意契約計約400億円分も立件対象とした。
元次長と電通側は、過去の大会運営実績などから各競技の受注候補一覧表を作るなど差配していたとされる。「入札の辞退を求められた」との企業の供述もあり、「官製談合」の様相を呈する。
大規模なスポーツイベントは、ノウハウを持つ業者の協力がないと円滑な開催は難しいとされ、業者を割り振る必要性を訴える捜査対象者の声も聞こえてくる。
だが、組織委は公的なプロジェクトを担い、職員は「みなし公務員」とされる。事業の発注先選びに公平性が求められるのは当然だ。
大会の開催経費の膨張も問題視され、抑制が求められていた。結果的に公費負担は約8千億円に膨らんだ。費用が高止まりした可能性がある談合が許されるはずがない。
元次長は大会後、受注企業の契約社員となり給与が支払われていた。癒着も疑われる。解明が必要だ。
それにしても、組織委のずさんな運営は目に余る。既に、スポンサー選定を巡る元理事や大手企業トップの汚職事件が明るみに出ている。談合事件でまた、東京大会の価値を失墜させた。その罪は重い。
不正の一因に浮かび上がるのは、電通依存の構造だ。電通は組織委と専任代理店契約をし、社員が多数出向した。実質的に運営を仕切り、電通出身の元理事は影響力を持った。今回の談合では、受注者でもあり発注者であり、調整役でもあった。
一連の問題に対する業界の反応からは、その構図は当然視されていたことがうかがえる。だが、五輪は民間事業でなく公的な事業だ。認識が欠如していた。官民共同で当たるイベントに関し、電通中心のシステムが限界を露呈したとも言える。
本来なら、こうした問題は組織委が検証し、幹部が責任をとるべきだろう。談合でも、本大会の随意契約につながる過程で上層部のチェック機能が働くべきだった。
しかし組織委は既に解散し、清算法人も業務を終了する。責任をうやむやにしたままでよいのか。教訓をどう生かすのか。スポーツ庁や日本オリンピック委員会(JOC)には踏み込んだ対応が求められる。