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2023.02.05 08:00

【国会論戦】踏み込んだ説明が足りぬ

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 通常国会の論戦は、安全保障や原発を巡って歴代政権が堅持してきた政策の「転換」が焦点になっている。政府は「防衛力強化資金」の創設を柱とする特別措置法案も国会に提出した。
 ただ、「転換」の議論は深まっているとは言いがたい。岸田文雄首相は施政方針演説で「国民の前で正々堂々議論する」と明言したが、議論の前提になる具体的な説明に踏み込まない答弁が目立つ。
 岸田政権は昨年末、安全保障関連3文書の改定を閣議決定し、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増が正式な方針になった。2023年度から5年間の防衛費を約43兆円に増やし、財源の一部を増税で賄う方針も決めた。
 衆院予算委員会の論戦では、野党側が「なぜ43兆円ありきなのか」と疑問視。首相は「1年以上にわたって議論を積み重ねた」「ぎりぎりの積み上げ、計算を行って政府として提案している」などとしている。
 だが、その積み上げの中身は、これまで国民の代表が集う国会ではまともに議論されていない。「進め方に問題があったとは考えていない」との答弁にも疑問が膨らむ。
 米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得予定数についても「安全保障上適切ではない」と明言を避けた。これでは、なぜ増税で新たな負担を強いられるのか、国民は腹に入らないだろう。
 首相はまた、集団的自衛権行使が可能となる「存立危機事態」の際、反撃能力を発動できるという認識を示した。一方で具体的な事例は「手の内を明かすことになる」と説明を拒否している。
 事態を認定する基準は曖昧で、米国の戦闘に巻き込まれかねないという懸念が拭えない。自民党内にも国際法違反の先制攻撃と認定されかねないとの声がある。戦後日本が国是としてきた「専守防衛」を逸脱するのではないか、といった根本的な議論を徹底する必要がある。
 原発政策も政府の決定事項の説明にとどまっているように映る。
 政府は昨年末の臨時国会閉幕後になって、次世代型原発への建て替えや運転期間の延長を盛り込んだ基本方針を決定した。
 福島第1原発事故を踏まえ、「過去の教訓を直視しているのか」という批判は根強い。首相はここでも政府と与党で1年以上議論したと言うが、原発に不安を持つ、幅広い層の声を「聞く力」は発揮したのか。野党側にはなお追及を求めたい。
 年頭に打ち上げた「異次元の少子化対策」は、児童手当の所得制限撤廃の検討に入ったとはいえ、総じてたたき台をまとめる段階にある。国民の負担増も取りざたされる財源確保策は、今春の統一地方選後に本格的に検討するという。看板の割には具体論を欠いている。
 選挙を前に、失点をしないよう具体の説明や財源の論議を避けているとすれば、やはり国会軽視のそしりは免れまい。首相が言う「丁寧な説明」の実践を求める。

高知のニュース 社説

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