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2023.01.28 05:00

【国会代表質問】議論の充実に努めねば

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 政府は政策方針を大転換したが、国民への説明は不足している。曖昧にしてはならない。国会での活発な論戦を通して合意形成に努める姿勢が欠かせない。
 国会は政府4演説に対する各党の代表質問が行われた。
 安全保障環境が厳しくなる中、防衛の在り方は重要な論点だ。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有について、岸田文雄首相は必要最低限度の防衛措置だと強調し、抑止力として不可欠との認識を示した。
 先制攻撃となる恐れの指摘には、国際法順守は当然の前提だと主張している。ただ、発動の対象は個別具体的な状況に照らして判断するとの発言にとどまる。首相は専守防衛の堅持を表明しているが、形骸化への懸念は根強い。歯止めについて具体的に説明する必要がある。
 国会での満足な議論もないまま、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定が昨年末に閣議決定されたことへの批判は根強い。首相は国会での丁寧な説明を心がけてきたと述べ、進め方に問題はなかったとの姿勢を貫いている。
 これまでにも内容、予算、財源を一体的に提示するため1年以上、丁寧なプロセスを経たと述べてきた。しかし、防衛増税には唐突との受け止めが多く、異論は自民党内からも出る。拙速感は否めない。
 防衛増税に関し、首相は将来世代への責任を強調する。国債発行を明確に否定する意図だろう。だが、「税制措置」と言及はしても、「国民負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行う」などと一般論にとどめている。
 安定財源や財政の問題を避けるわけにはいかない。自民の一部からは国債の償還期間の延長論が出ている。首相はルールの見直しには慎重な姿勢をにじませた。方針を明確にして踏み込んだ議論が必要だ。
 子ども・子育て政策は、将来の予算倍増へ向けた大枠を6月までに示すとする。昨年の出生数は80万人を割り込むと想定される。首相は、日本は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際にあると訴えている。
 このため対策を「最も有効な未来への投資」と位置付け、先送りできないと意気込みを見せる。重要なのはその内容と財源だ。4月には統一地方選・衆院補欠選挙がある。それまでに一定の方向性を示すことが選択の幅を広げ施策を充実させる。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と細田博之衆院議長をはじめ政治家との関係の解明に、首相の意欲はうかがえない。野党も追及方針に温度差があるようだが、ないがしろにはできない問題だ。
 首相は施政方針演説で、政治とは討論と検討を積み重ねた決断を、国会で国民の代表が議論して実行する営みと述べた。ならば、議論の前提となる説明に意を尽くすことだ。
 そもそも、国の針路に関わる重要な決断に議論不足の声が上がるようでは分断を進めかねない。課題と真剣に向き合う必要があり、野党も議論を深める姿勢が欠かせない。

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