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2023.01.24 08:00

【施政方針演説】「大転換」に議論深めよ

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 「信頼と共感」を政策遂行の原動力とするには、まず十分な説明と議論を通して理解を求めることだ。そうした姿勢が揺らぐようでは信頼と共感は遠のく。
 通常国会が召集され、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。
 ロシアによるウクライナ侵攻などで国際平和秩序は弱体化した。日本の安全保障環境は戦後最も厳しく複雑な状況にある。首相は昨年末に改定した国家安全保障戦略が示した現状認識にも触れながら、防衛力の抜本強化を主張した。積極的な外交を展開するが、外交の裏付けとなる防衛力が必要と位置付けた。
 反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有し、南西地域の防衛体制を抜本強化する。防衛予算の増額には決算剰余金などを充てるがまだ不足する。首相は演説では増税に直接は言及しなかったが、将来世代への責任として対応すると述べた。財源は重要な論点だ。
 日本の安全保障政策は「大転換」する。首相自身もそう位置付けた。それだけに説明を重ねる必要があり、国民的な合意を欠くことはできない。安保環境の厳しさは多くが認識しているだろうが、唐突で急速な進展に理解が十分に進んでいるとは思えない。
 首相は非核三原則や専守防衛を堅持し、平和国家としての歩みを変えることはないとする。大転換を図りながらどのように維持されるのか。軍拡競争を招きかねないと危惧される。議論を深める必要がある。
 看板政策の「新しい資本主義」に多くの施策が並ぶ。実効性を高める肉付けこそ大切だ。次世代原発への建て替えや運転期間の延長は議論が足りていない。
 子ども・子育て政策は今後、予算倍増に向けた大枠を示すという。先送りは許されないが、極めて難しい課題でもある。よほど本気で取り組まなければ成果は期待できない。
 昨年の施政方針演説で最優先課題に位置付けた新型コロナウイルス感染症との向き合い方も大きく変わってきた。春には感染症法上の位置付けを「5類」へと引き下げることをにらむ。経済社会活動の正常化を進めることは必要だ。同時に十分な医療提供体制が維持されなければ暮らしの安心は高まらない。丁寧な取り組みが重要だ。
 政治の信頼に関して、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や「政治とカネ」の問題にも言及した。再発防止へ改革を進める考えを示したが、明確な取り組みを重ねなければ信頼にはつながらない。
 首相は冒頭、日本では議会を英語でDietと、なぜほとんどの国とは違う呼び方なのかとある首脳から問われたことを紹介した。語源の「集まる日」に触れながら国会が慎重な議論を重ねる意義を強調した。
 それは憲法の規定に基づく臨時国会の召集要求への首相の姿勢にも関わると指摘しておく。今国会はいつにも増して重要な案件が山積する。野党の責任も大きい。論戦の充実を求めたい。

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