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2023.01.22 08:00

【通常国会召集へ】論戦の充実で存在示せ

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 国権の最高機関である国会が軽視されてはならない。国政の基本方針が討論を通じて決定されることが民主主義の成熟につながる。
 通常国会が23日召集される。岸田文雄首相は会見で、野党との活発な論戦を通して国民への説明を徹底させると述べている。防衛費に関連した発言だが、すべての分野に当てはまる。国民の理解を深めることが重要だ。それぞれが責務をしっかりと果たすことを望みたい。
 昨年の臨時国会が閉会してから、岸田政権は国の指針を変えかねない政策の大転換を打ち出してきた。
 国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定は、外交・安保政策を変容させる。首相は先のバイデン米大統領との会談で、防衛力強化や防衛費の増額方針を説明し、日米同盟を深化させる決意を共有した。
 持たないとしてきた反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に乗り出す。専守防衛の理念は形骸化していく。安保環境が厳しくなり、日米の連携強化は必要だろう。しかし、バイデン氏が支持を表明したといっても、国民的議論はこれからだ。
 防衛力を抜本強化する初年度となる2023年度当初予算案の防衛費は、前年度当初の1・2倍に膨らんだ。今後5年間でさらに増額する。防衛費は必要な額の積み上げよりも規模ばかりが先走る印象だ。
 防衛力を維持するには安定財源が重要となる。首相は、将来世代に先送りしないとして増税方針を打ち出した。財源確保を避けるわけにはいかないが、唐突な表明に野党はもとより自民党内部からも異論が上がる。議論の不足は明らかだ。
 原子力政策の転換へも昨年末に踏み込んだ。原発の長期運転や次世代原発への建て替えを基本方針に盛り込んだ。エネルギー資源の調達環境の悪化や脱炭素をにらみ、原発回帰に突き進む。しかし、安全性への信頼は揺らぎ回復してはいない。
 深刻化する少子化に歯止めをかけるために、首相は異次元の対策を掲げ、具体化を図る。最重要課題と位置付けることに異論はない。だが、ここでも財源が定まらない。議論は春の統一地方選後に先送りする意向のようだが、判断材料を示すことが施策を充実させていく。 
 先の臨時国会では世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡り、被害者救済法の成立へ与野党が修正で歩み寄った。その実績は今後の審議にも生かしたい。救済へ内容の充実が求められ、政治との関わりなどの解明を進める必要がある。
 国会議員の調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)は、使途公開や未使用分の国庫返納を積み残したままだ。特権に甘んじる姿勢では政治不信を高めてしまう。
 新型コロナウイルスに関し、首相は感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ「5類」へと引き下げる考えだ。その根拠や引き下げ後の在り方は判然とせず、前のめりでは混乱を招きかねない。ほかの重要案件も含め徹底した議論が欠かせず、野党も力量が問われる。

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