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2023.01.21 08:40

【新連載企画スタート】牧野博士が愛したバイカオウレン―ふるさとの花ごよみ(1)

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輝くように咲くバイカオウレン。博士が愛した野草の5枚の葉は県立牧野植物園のシンボルマークになった(写真はいずれも佐川町甲の牧野公園)

輝くように咲くバイカオウレン。博士が愛した野草の5枚の葉は県立牧野植物園のシンボルマークになった(写真はいずれも佐川町甲の牧野公園)


 ほの暗い林の中で、小さな星空が広がっているように見えた。足元で無数の白い花が、輝くように咲いていた。佐川町甲の牧野公園で、牧野富太郎博士がこよなく愛したバイカオウレンが、見頃を迎えている。

 博士は幼少期に生家裏の金峰(きんぷ)神社付近でこの花に出合い、終生特別な存在となった。著書で、こう語る。

 「小さい梅花様の白花が他の草にさきがけ、なお時候の寒いのにかかわらず、いち早くその葉の間に咲き綻(ほころ)びしその風情は、決して忘るることのできない思い出の印である」

 公園は、酒蔵の町並みを見下ろす古城山(こじょうざん)の麓にある。博士が亡くなった翌1958年に分骨が埋葬され、牧野公園と名付けられた。桜の名所として知られ、町は2014年から博士ゆかりの山野草も楽しめるよう再整備を進めてきた。

バイカオウレンの群生地で、小枝やコケを丁寧に取り除くボランティア

バイカオウレンの群生地で、小枝やコケを丁寧に取り除くボランティア

 作業を担うのは、ボランティア団体「牧野公園はなもりC―LOVE(くらぶ)」のメンバー。当初5人だった会員は今や10~80代の70人超となった。種から育てた苗を植え、世話をしており、現在は博士ゆかりの約430種を含め約700種にまで増えた。バイカオウレンもその一つ。町内に自生する株から増やし、博士の墓のそばの雑木林に植えられた。

 メンバーは「バイカオウレンは佐川のシンボル」「手塩にかけた花がいとおしい」と口々に話し、古参の山崎広さん(82)は「植物を愛した牧野博士の心に、みんな引かれているんじゃないでしょうか」と朗らかに笑う。

 公園では例年12月ごろに咲き始め、2月中旬が見頃のピーク。3月上旬ごろまでは楽しめるという。牧野博士を植物学の深奥へいざなった花は、今も多くの人を魅了してやまない。

 □   □ 

 四季折々、高知を彩る草花がある。時が来れば咲き、散る花々は、季節の暦をめくっているようだ。たくましく、時にはかなく咲く古里の花を、カメラで切り取る。(森本敦士)

高知のニュース 佐川町 自然・植物 牧野富太郎

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