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2023.01.21 05:00

【コロナ5類移行】科学的説明が欠かせない

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 政府の新型コロナウイルス対策は転換点を迎えることになる。ただ、足元は「第8波」のさなかで、国民の不安は依然大きい。政府には転換の科学的な根拠や、今後の対策について丁寧な説明が求められる。
 岸田文雄首相は新型コロナの感染症法上の位置付けを、今春に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明した。移行する時期は政府内に4月など複数の案があるという。
 感染症法は、感染力や症状の重さに応じて原則五つに分類される。新型コロナ感染症は当初、結核などと同じ2類に相当する対応だったが、現在はより幅広い措置が可能な「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられている。
 5類になれば、緊急事態宣言の発令や感染者に対する外出自粛要請などを定めた新型コロナ対応の特別措置法の適用対象から外れる。感染者で7日間、濃厚接触者で5日間の待機期間もなくなる見通しだ。
 一方、医療費には原則自己負担が生じる。政府は当面、経過措置として公費負担を続けるとみられるものの、ワクチン接種も含めて受診控えや検査控えにつながるような対応は避けなければならない。
 また、一般の医療機関で幅広く診療や入院患者の受け入れを行う必要も出てくる。行政による患者の入院調整を行う根拠がなくなるが、専門家が主張する医療逼迫(ひっぱく)時の調整機能の維持も課題になろう。
 首相は、マスク着用の考え方も見直すとした。日常生活の対策が大きく変わる可能性もあるが、専門家からは急激な緩和に異議も出ている。さまざまな転換は慎重に検討し、説得力のある説明を求めたい。
 国内で初めて新型コロナ感染者が確認されて今月で3年が過ぎた。緊急事態宣言などの厳しい行動制限で感染拡大防止を目指した最初の2年間とは異なり、岸田政権は「ウィズコロナ」に大きくかじを切り、対策を緩和してきた。
 ワクチン接種の普及などで致死率が以前より低下したことに加え、長期にわたる制約で少子化の加速や高齢者の活動性の低下、経済の停滞など社会への悪影響が無視できなくなっている事情はあろう。
 だが、岸田政権の発足後は、感染力が強いオミクロン株が拡大。それまでの2年間で約180万人だった感染者数の累計は、この1年で約3千万人も増えた。死者数の増加も顕著で、とりわけ第8波では過去最多の1日500人前後の報告が続く。この間、首相のメッセージ発信が十分だったかには疑問が募る。
 厚生労働省の専門家会議でも、5類移行には「感染を避ける病気ではないといった雰囲気が広がる恐れがある」と慎重論があった。新たな変異株への対応や、さらなる医療逼迫を懸念する声も根強い。
 5類移行が緩みを生み今後の感染者、死者の拡大につながることがあってはならない。科学的根拠に基づく政府の対応と、ここでも岸田首相の「説明する力」が求められる。

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