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2023.01.26 00:04

【K+】vol.193(2023年1月26日発行)

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K+ vol.193 
2023年1月26日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter195 中西なちお
・特集 伝える豆腐屋|◎豆匠庵
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉39
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.67|サトイモ@四万十町
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.195 門脇真里
・Sprout Table vol.11 村の小さな台所 おきな
・K+ cinema 記憶のなかの映画館⑳
・ちいさいたび #12
・+BOOK REVIEW
・なにげない高知の日常 高知百景
・日々、雑感 ある日 vol.25
・気の向くままに お気軽 山歩き ;40
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第四十回
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真


特集
伝える豆腐屋
豆匠庵

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真


豆腐の可能性を探り続ける
豆腐屋の3代目夫婦が導く
新たな豆腐との出合い。




濃厚な豆腐の味を受け継いで

 「高知伝統の豆腐といえば、重くて硬い田舎豆腐。硬くないと豆腐じゃないと言う人がいるほど高知ではなじみの味です。田舎豆腐の製法は、長宗我部氏が朝鮮から連れて来た一族が伝えたそうで、歴史があるんです」。そう教えてくれたのは高知市春野町の豆腐屋・豆匠庵3代目の谷脇まりさん。豆腐について深く学び、豆腐文化を伝えることも大切にしています。
 元々、豆匠庵は、まりさんの祖母が1940年代に岡崎豆腐店として始めた豆腐屋で、手作りの豆腐が地域の人に愛されてきました。2代目の父は新たな豆腐作りに挑戦。当時は珍しかった国産大豆のみを使い、大豆の分量を通常より多くして豆腐を作り「豆匠庵」の名で販売。味が濃いと評判だったそうです。その父が腰を痛め、店を畳もうと考えていた時、継ぐと手を挙げたのは、まりさんの夫・行彦さんでした。「義父がずっと続けてきたことを終わらせるのはもったいない」と。
 先代から作り方を学び、2012(平成24)年から豆匠庵の屋号で、夫婦で豆腐屋を継ぎます。昨年には、同市六泉寺町に豆腐のお弁当や総菜が買える実店舗をオープンし、豆腐と人の新たな出合いの場を創り出しています。




10種類以上のおかずが入った色鮮やかなお弁当。お味噌汁などをセットにしてイートインでも楽しめます

10種類以上のおかずが入った色鮮やかなお弁当。お味噌汁などをセットにしてイートインでも楽しめます



先代こだわりの製法で作る豆腐


 週2回が豆匠庵の豆腐製造の日。午前5時から工場で行彦さんの豆腐作りが始まります。前日から水に漬けておいた大豆をつぶし、煮て、豆乳とおからに分ける作業が進むにつれ、工場内に大豆の香りが広がります。最初に作るのは、田舎豆腐。まだ熱い豆乳ににがりを加え、均等になるよう素早く混ぜ、冷やし固めた後に型へ。押しぶたで強く押して水を切ると硬い田舎豆腐が出来上がります。
 同時並行で作る木綿豆腐と塩とうふは、ゆっくりと豆乳を冷やした後ににがりを入れるという、手間をかけた作り方を続けています。「滑らかな食感になるからと義父こだわりの製法です」と行彦さん。
 途中からまりさんが作業に加わり、パック詰めした後は配送へ。午後7時頃、製造の1日が終わります。




上/濃厚な味の「木綿豆腐」、左/昔ながらの硬めな「田舎豆腐」右/軟らかくとろりとした「なめらか塩とうふ」

上/濃厚な味の「木綿豆腐」、左/昔ながらの硬めな「田舎豆腐」右/軟らかくとろりとした「なめらか塩とうふ」










自らが納得する材料を求めて

 豆腐屋の仕事は大変と、継ぐ気はなかったというまりさんは、美容関係の仕事に就いていました。行彦さんは長く県内の飲食店で料理人として勤め、店を持つことを夢見て、兵庫の小料理屋でも修業。兵庫にいた2人は、結婚を機に高知に戻り、数年後、家業を継ぐことになります。
 最初は反対したまりさんでしたが、父から豆腐作りを懸命に学ぶ行彦さんの姿に心動かされ、夫婦で受け継ぐことを決心。「夫とは違った分野で、私ができることをやりたい」と、豆腐屋同士の勉強会などに参加して豆腐の知識を深めます。ある会で「人生で一番おいしいと思った」という豆腐に出合ったまりさん。豆腐の味は大豆で変わる。そう確信し、行彦さんと共に材料を見直し、自分たちが納得する豆腐を追求し始めます。






熱い豆乳を櫂(かい)で素早く均等に混ぜる田舎豆腐作りの工程

熱い豆乳を櫂(かい)で素早く均等に混ぜる田舎豆腐作りの工程


長野県産の大豆を地域別に約10種類試して選んだ大豆を使用

長野県産の大豆を地域別に約10種類試して選んだ大豆を使用




プロフィール
谷脇まりさん
岡崎豆腐店の2代目の娘として育つ。大阪の美容専門学校卒業後は美容の仕事に携わる。2012(平成24)年に夫と一緒に豆匠庵の屋号で家業を継承。高知市出身。42歳

谷脇行彦さん
県内外の飲食店で働き、料理の経験を積む。豆匠庵を継いでからは豆腐作りを担い、昨年オープンした実店舗では、自ら腕を振るった豆腐のお弁当を販売。高知市出身。37歳


豆腐の魅力を伝える場

 「これまで食べたことがないような豆腐を作りたい」と、18(同30)年に生み出したのが「なめらか塩とうふ」です。厳選した長野県産大豆と、黒潮町の土佐の塩丸のにがりを使うことで、夫婦が求める豆腐の食感と味に仕上がりました。
 その商品のファンも増え、商いは順調だったため、次に目指したのは工場新設でした。しかし、新型コロナウイルスの流行などで計画が白紙に。「今後の方向を見直す良い機会でした。大きくするのではなく、自分たちだからできることをと思い、豆腐の魅力を伝え、新発見をしてもらえる豆腐専門店をつくることにしました」とまりさん。
 そして昨年オープンした実店舗「toushouan」は、店を持つ夢をかなえた行彦さんが腕を振るう、豆腐料理が詰まったお弁当が看板メニュー。「リンゴとセロリの白和え」や、「揚げ出しとうふの醤油麹(しょうゆこうじ)のせ」など、一風変わった味に毎回わくわくさせられます。「脇役のイメージの豆腐ですが、手を加えたら主役になれます」と行彦さん。
 また、まりさんは、豆腐にちなんだワークショップを店で開催。2人による豆腐の新提案を楽しみに、多様な人が集うようになりました。
 今後の望みを聞くと、「豆腐屋だからこそ作れる豆腐料理に挑戦したい」と行彦さん。「私たちの子どもが豆腐屋の仕事を応援してくれるのがうれしくて。若い人の職業の選択肢になるような豆腐屋にしていけたらと今は思います」とまりさん。
 豆腐の新たな楽しみ方を伝え、その魅力を伝える人も育つ、可能性に満ちた豆腐屋さん。ここから豆腐の新たな扉を開く人が広がっていくに違いありません。






豆匠庵の3種類の豆腐や豆乳、厚揚げや総菜、豆腐プリンなどが並ぶショーケース

豆匠庵の3種類の豆腐や豆乳、厚揚げや総菜、豆腐プリンなどが並ぶショーケース


県内の料理家や作家さんなどとコラボレーションしたワークショップも行われる店内

県内の料理家や作家さんなどとコラボレーションしたワークショップも行われる店内










右から、木綿豆腐用の室戸海洋深層水のにがり、塩とうふ用の土佐の塩丸のにがり、田舎豆腐用の北海道オホーツク産のにがり。豆腐によってにがりを使い分けて

右から、木綿豆腐用の室戸海洋深層水のにがり、塩とうふ用の土佐の塩丸のにがり、田舎豆腐用の北海道オホーツク産のにがり。豆腐によってにがりを使い分けて





◎豆匠庵
実店舗「toushouan」
高知市六泉寺町3-2東端
問/080-5663-3206
営/11:00〜17:00
※売り切れ次第閉店する場合あり
休/月・木・日
HP/https://toushoan-tofu.com

〈取扱先〉
店舗、自社ホームページ、とさのさと、一部高知市内サニーマートなど
※お弁当・総菜販売は実店舗のみ。
フードロスをなくすためお弁当などの用意は少量なので
事前予約をおすすめします。
営業日の9:00〜15:00で予約可能


掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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