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2023.01.20 08:00

【中国の人口減少】経済安定へ問われる手腕

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 世界経済のエンジン役を担ってきた中国が、曲がり角を迎えた。右肩上がりの終焉(しゅうえん)を意味しているかもしれない。
 中国が人口減少時代に突入したとみられる。国家統計局によると、2022年末の総人口(台湾や香港、マカオを除く)は、前年から85万人減って14億1千万人余りとなった。労働人口の増加による「人口ボーナス」で成長を遂げた世界第2の経済大国も、急激な少子高齢化という難題に直面している。
 中国の人口減少は、毛沢東による大増産政策「大躍進」運動の失敗で多数の餓死者を出して以来、61年ぶりだった。国連の人口推計で世界2位のインドが最多になった可能性がある。
 背景には、急速に進む少子高齢化がある。中国では、豊かな先進国になる前に高齢化が進む事態を「未富先老」と呼んで警戒してきたが、その懸念が現実になりつつある。
 習近平指導部は、1979年から続いた「一人っ子政策」を2016年に廃止。21年には産児制限も事実上撤廃した。第2、3子出産への報奨金支給や育児環境の整備といった対策も打ち出している。一連の動きは習指導部の危機感を表しているといえよう。
 だが、少子化に歯止めはかかっていない。22年の出生数は6年連続の前年割れで、初めて1千万人を下回った。先行する日本と同様、教育費の高騰、若い世代の多様な価値観など複雑な要因が絡み合っているに違いない。
 一方で、高齢化も加速している。65歳以上の割合は「高齢社会」の基準値とされる14%を超え、14・9%に達した。こうした傾向が続けば、これまで右肩上がりだった中国経済も影響は避けられまい。
 22年の国内総生産(GDP)は前年比3・0%増にとどまり、政府目標の「5・5%前後」を大幅に下回った。ただし、これは新型コロナウイルス流行を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策が足かせとなった側面が強い。感染が一巡すれば景気回復が進むとの見方もある。問題は中長期的な経済運営だ。
 少子化の影響は、中国を「世界の工場」に押し上げた労働力の低下を招くだけではない。消費が旺盛な若い世代が減っていくと、内需が縮小して市場としての活力を損なう可能性が否めない。高齢者の増加で年金や医療など社会保障の負担も膨らみ、いずれは経済成長への重しとなっていこう。
 かつてのような2桁成長が望めない中、現実に即してどう対応するのか。経済の安定は、共産党の統治を正当化する命綱といってよい。強権的な手法では解決できない課題で、3期目に入った習指導部の手腕が問われることになる。
 中国の行方は、日本経済とも密接に関連する。自国の市場に加え、最大の貿易相手国である中国が低成長に陥れば、大きな影響を受けかねない。隣国の少子化をにらみながら、しっかりと長期戦略を描きたい。

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