2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.01.18 08:00

【元徴用工問題】今度こそ解決へ道筋を

SHARE

 日韓間の懸案となっている元徴用工問題が解決に向かう可能性が出てきた。
 韓国側が日本企業の賠償支払いを韓国政府傘下の財団に肩代わりさせる解決案を公表した。肩代わりしても、財団は日本企業に賠償金の返還を求める「求償権」を放棄する方向で調整しているようだ。
 今後、韓国内の世論や日本政府の反応も見極めた上で正式決定を目指すという。両国の関係改善を目指す韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権が日本側に歩み寄った案といえるだろう。
 これに合わせ、日韓両政府は外務省局長協議も開催。本格的な話し合いに入っている。日本政府は、既に解決済みの問題というこれまでの立場を堅持できれば、韓国案を後押しする構えだ。
 歴史問題の解決は感情論もあって容易ではない。しかし日韓はいま、不安定さを増す東アジアの安全保障や経済の情勢を見ても、連携の必要性が高まっている。今度こそ解決への道筋を付けたい。
 この問題では、太平洋戦争中に朝鮮半島出身者が日本に徴用され、労働を強いられたとして、本人や遺族らが長年、日本政府や企業に補償を求めてきた。ただ、日韓の認識には隔たりが大きい課題である。
 両国は1965年、国交正常化に当たり、請求権協定を締結。韓国が植民地時代の補償を放棄する代わりに、日本が計5億ドルを供与する内容だった。これにより日本政府は元徴用工の個人請求権も消滅したと一貫して主張してきた。
 韓国側も盧武鉉(ノムヒョン)政権時代の2005年、この協定を再検証する官民合同委員会を設置。徴用工の請求権はやはり協定に含まれるとの結論に達している。
 ところが紆余(うよ)曲折があり、韓国最高裁は18年、日本企業2社に対し、原告の元徴用工らに賠償を命じる確定判決を出した。韓国の地裁は原告が差し押さえた2社の韓国内資産に対する売却命令も出している。
 歴史問題では、元従軍慰安婦問題の解決をうたった15年の日韓合意も、後に韓国内の反発などによって事実上白紙化され、日韓関係が冷え込んだ。
 文在寅(ムンジェイン)・前政権当時の日韓関係は安全保障や貿易でも関係が悪化。現政権は関係修復に積極的で、日本では今回の解決案も一定評価する声がある。ただ、これまでの経緯から疑心暗鬼になるのは確かだ。
 実際、韓国内では肩代わり案に強い反発が出ている。再びちゃぶ台返しにならないよう、韓国政府はまずは国内でしっかりと議論を重ね、合意形成を図ってほしい。
 もちろん日本は植民地時代に朝鮮半島の人々の人権を踏みにじったことを忘れてはならない。真摯(しんし)に歴史に向き合い続ける必要がある。
 日本政府は求償権の放棄を条件に、日本企業による自発的な財団への寄付は容認する方向で調整しているようだ。現実的な対応といえるだろう。韓国側の提案を無駄にしないよう協力姿勢が欠かせない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月