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2023.01.16 08:00

【賃上げ春闘へ】中小企業にも及ぶように

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 歴史的な物価高が続く中、賃上げに向けた機運が高まっている。
 連合は2023年春闘の賃上げ目標を5%程度と設定。22年実績の2・07%から大幅に引き上げた。経団連も賃上げを「企業の社会的責務」とし、会員に大幅上げを求める春闘方針をまとめた。「責務」の表現に従来にない積極性がうかがえる。
 実際に、今ほど賃上げの必要性が高まっている局面はあるまい。
 値上げは、幅広い生活必需品に及んでいる。苦しさが増している働き手の暮らしを守る必要がある。
 賃上げが滞れば消費は冷え込んで企業業績が悪化し、賃上げがさらに厳しくなる悪循環も招きかねない。逆に物価高をカバーできれば、内需主導で企業業績は上がり、継続的な賃上げにつながる可能性もある。
 岸田文雄首相は23年を「好循環に入れるかどうかの天王山」とし、賃上げを呼び掛ける。経営者側には「責務」を全うする姿勢を、労組側には粘り強い交渉を求めたい。
 原材料費高騰などに伴う物価高が収まる気配は、まだ見えていない。消費者物価指数は昨年11月に前年同月比3・7%上昇し、40年ぶりの伸び率だった。12月の東京都の上昇率は4%台に達した。輸入品の物価高を助長してきた円安傾向は一服したものの、今年上半期も多くの食品値上げが予定されている。
 この物価高によって実質賃金は下がり続けており、昨年11月は前年同月比3・8%減で、消費税引き上げの影響が出た14年5月以来の大きな下落率となった。
 一方、企業側は、円安により業績を伸ばす輸出型企業を中心に体力をつけている。法人企業統計によると、21年度の内部留保は516兆円で初めて500兆円を超えた。昨年度上半期の経常利益も過去最大だった。
 マクロで見れば、大幅賃上げの環境は整いつつあるように見える。だが業種などで濃淡あり、近年の2倍以上の水準の賃上げに難色を示すケースも出てこよう。春闘に先んじて一部企業が大幅賃上げを発表する事例も出始めた。好業績の企業がムードをけん引してもらいたい。
 重要なのはやはり、労働者の7割近くを雇用している中小企業にも波及させることだ。それがなければ景況感の底上げは限定的で、二極化を助長することにもなりかねない。非正規労働者をカバーする上では最低賃金の改定もポイントになろう。
 中小企業の厳しさの一つが、大企業との取引時、原材料費やエネルギー代などコスト上昇分を価格に転嫁しにくいことだ。
 政府が取引の適正化を促す中、公正取引委員会は昨年末、下請け企業との取引で適切な価格転嫁をしなかった13社を実名公表した。こうした対策で実効性を上げていきたい。
 価格転嫁できたとしても、体力のない多くの中小企業にとって、賃上げ原資の確保は簡単ではあるまい。政府は、生産性向上や優遇税制などの支援策を通じて、働き手にあまねく賃上げが行き渡るよう環境を整えていく必要がある。

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