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2023.01.15 08:00

【日米首脳会談】国民への説明が足りない

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 厳しくなる安全保障環境をにらみ、日本と米国の連携を強化することは必要だろう。だが、一体化の加速はかえって緊張を高めかねず、対立に巻き込まれる恐れもある。危機意識ばかりが先走っては分断を深める。何より、安保政策の転換は国民への説明が不足したままだ。
 岸田文雄首相はバイデン米大統領と会談した。岸田政権は昨年12月、国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定して安保政策を転換した。それに基づく防衛力強化や防衛費増額の方針を説明し、日米同盟の深化へ決意を共有した。
 国家安保戦略では、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出している。それを踏まえ、会談では開発と運用への協力で一致した。
 首相は米国製巡航ミサイル「トマホーク」を導入する考えを伝えた。日米同盟は日本が「盾」、米国は「矛」を担ってきたが、専守防衛の理念は形骸化していく。
 反撃能力の運用にはミサイルだけでなく、相手国に関する情報を収集し分析する能力が必要となる。日本の衛星を守るため、日米安保条約第5条による米軍の対日防衛義務を宇宙に拡大する。宇宙分野でも優位確保へ連携が強化される。
 共同声明は、核を含むあらゆる能力を用いた対日防衛への揺るぎない責務を表明した。国家安保戦略でも、核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止の提供に言及している。
 一方で首相は、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)について、核兵器の惨禍を二度と起こさない誓いを広島から世界へ発信したいと述べている。「核の傘」と核軍縮をどう整合させるのか分かりにくいまま、事態は進展している。
 バイデン氏は防衛費増額など日本側の姿勢を歓迎した。日米同盟を現代化するとも述べている。安保分野を米国に大きく依存してきた日本の転換に強い期待がうかがえる。
 バイデン政権は同盟、友好国と緊密に連携し、軍事だけでなく経済や情報などを組み合わせた統合抑止で脅威を押さえ込む方針だ。日本との役割分担や抑止力・対処力を強化する方策が探られる。
 中国での新型コロナウイルス感染拡大を受け、共同声明はデータの開示などを求めた。中国は日韓の水際対策に反発し、ビザの発給を停止している。独善的で強硬な姿勢は容認できない。ただ、この問題を含め、対話の重要性は一段と高まっている。その機運は乏しいが、対立回避へ努力を怠ることはできない。
 首相は訪米に先立ち、G7の議長国としてG7メンバー国を訪れ、安保協力を相次いで打ち出した。同志国との結び付きを深める意向だが、防衛政策への国民の理解が深まっているとは思えない。
 防衛財源を巡る増税について首相は、「1年以上、丁寧なプロセスを経た」と述べている。しかし、反発は自民党内からも上がる。十分に説明し、国会で論議することだ。

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