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2023.01.13 05:00

【鳥インフル拡大】最大限の警戒と対応を

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 高病原性の鳥インフルエンザが全国で猛威を振るっている。昨年秋に始まった今シーズンの流行で、これまでに20を超える道県で養鶏場などでの感染が約60件確認され、1千万羽を超える鶏などが殺処分された。まだ流行期の折り返しながら、すでに過去最悪の流行となっている。
 香川や岡山、宮崎など本県と距離が近い地域でも発生が相次ぎ、県内のどこで発生してもおかしくない状況だ。自治体や事業者は警戒を強めていようが、油断なく防疫対策を積み重ねる必要がある。
 鳥インフルはあくまで鳥の病気だが、ウイルスの遺伝子に変異が起きた場合、人間にとっての新型インフルエンザ発生や流行につながる恐れも否定できない。それだけにウイルスの封じ込めを徹底する対応が欠かせない。
 今シーズンの感染多発は、欧米をはじめとする世界的な流行が影響しているようだ。
 欧州では昨年、夏場にも感染が相次ぎ、野鳥が継続的にウイルスを保有するようになったとみられる。渡り鳥が運んだウイルスがシベリアでまん延し、日本に飛来する渡り鳥も保有する割合が増えた可能性があるという。病原性が弱まって致死率が下がったことで、かえってウイルスが広がりやすくなったとの見方もある。
 養鶏場で感染が発生すれば補償されるとはいえ、殺処分による事業者のダメージは計り知れない。周囲の養鶏場なども鶏や鶏卵の移動や搬出が家畜伝染病予防法に基づいて制限されるなど影響は大きい。例年以上にリスクが高まった状況で、最大限の警戒と対応が求められる。
 本県では既に、近県の感染事例を受け、県の家畜保健衛生所が養鶏場を検査し、消毒用の消石灰を配布している。事業者も鶏舎に立ち入る際の消毒、野生動物の侵入を防ぐネットの設置・修繕などを徹底しているだろう。
 だが、それでも完全に防げると言い切れないところに対策の難しさがある。窓がなく外部と接しない鶏舎でも、今シーズンは感染が確認されている。細部までできる対策を積み重ねることで、「見えない敵」が侵入する確率を可能な限り下げていくほかあるまい。
 事業者による防疫の徹底で被害の拡大を防ぐとともに、消費者側にも冷静な対応が求められる。
 今シーズンの感染事例は採卵鶏が大半で、殺処分数は全国の飼育数の約8%に上り、鶏卵価格も上昇している。ウクライナ危機で飼料価格が高騰したところに、鳥インフルが追い打ちをかけた格好だ。ただ、農林水産省によると、一般の供給量には問題はないという。
 風評被害も懸念される。過去には、発生を受けて鶏肉や鶏卵の売り上げが落ち込んだことがあった。ただ、日本の現状では鶏肉や鶏卵を食べたとしても感染する恐れはないとされる。正しい情報に基づいた行動で二次的な被害を防ぎ、流行期を乗り越えたい。

高知のニュース 社説

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