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2023.01.10 08:00

【少子化対策】財源と具体策が見えない

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 岸田文雄首相が、将来的な子ども予算の倍増に向けた大枠を6月の経済財政運営指針「骨太方針」策定までに示す考えを明らかにした。こども政策担当相に関係官庁の局長級らでつくる新たな会議の設置を指示、3月末をめどに支援策のたたき台を取りまとめる。
 子育て支援の充実自体に異論はあるまい。「異次元の少子化対策」と強い表現を使った意気はよいとして、どう裏付けとなる財源を確保するのか。説明不足は否めない。
 首相が指摘する通り、少子化対策が「先送りできない問題」であることは確かだ。
 女性1人が生涯に産む子どもの人数を示す合計特殊出生率は2021年に1・30にとどまり、6年連続で低下。昨年の出生数は初めて80万人を割り込む見通しで、国の想定を超えるペースで少子化が進む。
 政府は1994年のエンゼルプラン策定に始まり、保育所整備や幼児教育・保育の無償化などを打ち出してきたが、目立った効果はみられなかった。このままでは、年金や医療といった社会保障制度を維持することも難しくなってこよう。
 首相は年頭の記者会見で、児童手当などの経済的支援の強化、子育て家庭を対象とするサービス拡充、働き方改革の推進と育児休業制度の強化といった対策の方向性を例示した。ただ、従来施策の課題を踏まえ、岸田政権としてどう効果を上げていくのかという視点は見えない。それだけに、現状では具体策よりも「予算倍増」の方針が先走った印象が拭えない。
 さらに、首相は肝心の財源にも踏み込まなかった。少子化対策は効果が出るまでに息の長い取り組みを求められる。安定的な財源は不可欠といってよい。岸田政権は2023年度からの防衛費増額の一部を増税で賄う方針だが、この厳しい財政下で新たな財源をどう捻出するのか。
 自民党内では、税制調査会幹部が少子化対策の財源として消費税増税に言及し、波紋が広がる。安定財源に違いないが、防衛増税に加えてさらに負担が増すことになれば、かえって少子化の背景に指摘される国民の将来不安を膨らませることにもなりかねない。
 こうした懸念を招く背景には、首相の説明不足、政権運営姿勢があろう。首相は同じ記者会見で、昨年の成果として防衛力強化や原発活用の方針転換を挙げた。
 いずれも形式上は専門家や実務者の協議を経て決定されたが、国会などオープンな場での議論は極めて限定的だった。国民の目に唐突で、独り善がりな政策転換に映ったとしても仕方があるまい。防衛増税も原発への回帰もどれだけ民意を得ているか、疑問を禁じ得ない。
 4月には「こども家庭庁」が発足する。少子化対策で子どもを産み育てやすい環境づくりは重要だが、社会的な機運を高め、国民の意思が伴わなければ成果は望めまい。具体策、財源ともに国民のニーズをくみ取る丁寧な議論が求められる。

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